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呼ばれて、店入り口の脇にある家人用の玄関に出る。そこには立派な身なりの紳士と、重そうな鞄を下げた女性が立っていた。

『先生をご案内しておくれ』
「はい。どうぞこちらへ」

これだよ。

下っ端も下の俺が、母屋への出入りを許されるなんて。
任された時は面食らったけど、定治さん曰く『信用度』らしい。
…やっぱよくわかんねー。
てか、ここん家かなり特殊だよな?
気のせいなんかじゃねぇわ。



障子を開ける度違和感あるそこは、畳の上に敷物が置かれた『洋間』だ。
二人掛けの長椅子と、高さを合わせた机…テェブルと言うらしい…があり、その向こうに寝台がある。
先生達を通しお茶を出して、俺は更に奥へ足を運ぶ。
庭に面した、全面硝子戸の廊下を進んだ突き当たり。
ぴたりと閉められた襖の部屋の前まで辿り着いて、膝まづきその向こうに声を掛けた。

「宏太さん」
「雄也か。お入り」
「先生がお見えです」
「判った。…慧」
襖を開けると、宏太さんに支えられて一人の少年が寝台から起き上がる。
不安げに宏太さんと俺を交互に見るから、二人で頷いてやり、促した。

お二人を洋間に案内し、俺の役目は終わり。


その洋間は、俺達使用人の間では『診察室』と呼んでいる。
定期的に診察(それ)が必要な慧さんのため改装した部屋なのだと、彼付きの大貴さんが教えてくれた。
確かに畳の床より、寝起きが楽そうだと思う。
障子の向こうの慧さんの部屋も洋風で、布団ではなく寝台…『べっど』だし。





宏太さんと慧さんと言うのは、この店の息子さん達で兄弟だ。

最初の日。中庭にいた二人と偶然居合わせ、紹介されたんだけど。

まぁ色々驚いたよな。
一介の使用人を坊ちゃん達にわざわざ紹介して、本人にはよろしく、って頭下げられたりとかさ。

跡取りの宏太さんと俺は同い年で、慧さんは三つ下。

慧さんは訳あって口が不自由なのだと、場を辞してから定治さんがそっと教えてくれた。
それを痛ましそうに話す姿に、ここでならやっていけるかも…って、漠然とそう思ったっけ。

それにしても…何もかも今まで奉公してた所と違いすぎるよ。



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夏夢(プロフ) - mikaさん» mikaさまありがとうございます(*≧∀≦)読み返して頂いてるなんて嬉しすぎます!焦れったい展開で申し訳ないですが、もう少しお付き合いくださいませ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» ひかセンセーは周りのことなら敏いのですwそーよね、仕掛けるの見たかったっす!慧坊っちゃんも動くかなー?ヒャヒャヒャ♪ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - このお話が好きすぎて何度も読み返しています…!慧さんと雄也さんの関係もさらに動きそうな予感…!?続きを楽しみにしてます♪ (2019年9月1日 19時) (レス) id: 8f2d116da6 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - いやぁぁんん。光先生ッタラァー。察しが良すぎるー。そして、、なんですと?仕掛けたかったですと??なぁんてこと!!見たかったぞwwwそして、かわいいヤキモチもいい!さすがコウタさんの選んだ人〜〜。さて?色々バレちゃったシー。味方が増えた! (2019年8月28日 15時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 私もびっくりだよゆやさん(笑)一体誰に教わったんだー!そんなテクで落とした坊っちゃん大変にならないといーけど♪うひゃひゃ (2019年8月2日 20時) (レス) id: 6404b316b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏夢 | 作成日時:2016年10月17日 11時

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