検索窓
今日:6 hit、昨日:11 hit、合計:86,465 hit

9 ページ25

yuya.


「ユーヤっ、まじょはっ?」

「…心配ないよ。ここに辿り着けて、張っていた気が緩んだんだろう」

変わらない銀色の狼。…良かった。
まだ『子供』でいてくれて。

「起きたら蜂蜜湯をお願いできるかな」

目を泳がせれば、リョースケが俺と目を合わせ頷いてくれる。

「ありがとう」

「なぁっ、何があったんだ?おまえら魔物の気配がするってっ」

「コ、コータっ!」

「コータくんっ」

「いいよ、二人とも。…その通りだ」

諌めるヒカルくんとユートに、片頬で笑って制した。

「俺とマスターは、此処を発って北に向かった…そこで戦いを知り、討伐隊に加わったんだ」

視界の隅でリョースケが立ち上がる。

「ケイの腕を見込まれたんだね」

落ち着いた声音で聞かれ、ヒカルくんに頷いて見せた。

「マスターは、魔封の呪文を操る数少ない魔法使いだから」

「まふう…?」

聞き慣れない単語に上がる疑問符に、「そうだよコータくん」と、返した。

「説明後でいいから続きはっ?」

ずいっと身を乗り出され、可笑しさが込み上げる。ああ…やっと笑う余裕が出たのか俺は。

「…魔物達は手強かった」

その一言で緊張が走る。

「封印が何らかの理由で一部解けてしまっていて、しかも魔道士不在。皆ギリギリの所で戦ってた」

「魔道士不在?!そんな無茶な…」

ユートに頷いて見せ、息を吐く。
魔物達との戦いに於いて、魔道士は不可欠だ。彼らが居なくては倒した魔物を封じる事が出来ない。

「攻撃をくらい負傷したらしい。…マスターが引き受けるしかなかった」

ほわりと鼻腔を擽る甘い匂い。

「それで負けたのか?!」

空気を読まないチビに慌てたのは周りだ。
あわあわしてる大人二人を目で制し、唇の端で笑って見せた。

「負けてたら此処にはいない」

コトン、とココアの入ったカップが置かれる。礼を言う前に、燃える紅の瞳を細めたリョースケがフフン、と鼻で笑う。

「馬鹿だねコータは。この人達のこと本当に知らないの?」

「何だと新入りっ」

「やめなさい2人共」

受け取ったカップを持ったまま、静かにヒカルくんが窘める。

「ユーヤ、続きを」

「ありがとうヒカルくん」

こそこそとユートにくっついてく二人に吹き出しそうになったけど、コホン、と咳払いして口を開いた。

.

10→←8



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (198 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
268人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 黄色いうさぎさまはじめまして☺️わぁ、何度も読んで頂いてるんですね☺️ぉ、おおぅ旗部屋リピートも(恥(/▽\)キャッ)💦こちらこそありがとうございます😆励みになります💕 (2022年9月14日 12時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - こんばんは、始めまして夏夢さん。夏夢さんの作品を定期的に読み直しています。回路…や尾行シリーズも好きです。旗部屋も😁どれも素敵なお話達、やさぐれた私の心を癒やしてもらってます。ありがとうございます (2022年9月13日 22時) (レス) id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ちぃちゃんさん» ちぃちゃんさま、拙話を寛ぎのお供にだなんて、恐縮でございます😆ありがとうございます(照)💕子狼くん、またお目見えしました時は遊びにきてくださいねー😊💕 (2022年5月3日 16時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - 連休で時間がたっぷりあるのでシリーズ読み返していて、「回路…」の薮伊野にキュンときました。 薮伊野大好きですが子狼くん達のお話も大好きで読み返してはやっぱり作者さんの紡ぐお話大好きだなと改めて思いました。 (2022年5月2日 20時) (レス) id: bdaf2a3994 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 食べられてしまいましたねー(^-^;そうなんですよ、お話の肝なのにさくっとし過ぎてしまいまして…これは覗き見案件なんでしょーか( ̄▽ ̄;) (2021年2月19日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夏夢 | 作成日時:2020年3月20日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。