Dekigokoro-no-page 8

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ここに、昔見た事のあるアナログな時計があったら。

秒針の音がずっと聞こえるくらい、静かなんだろう。




「………えー、伊野尾さん？」

突然のことに固まって動けないおれ。痺れを切らしたのはやぶだった。

「返事…は、如何でしょう…」

待ってよ。

「いのおー？」

おまえ大体こんな大事なこと、さらっと言いすぎだし。

「おーい」

判ってるの？それプロポーズだよ？
しかも『というか』ってなにそれ。

今昔古今東西宇宙レベルで、永遠(そんなもの)なんかないの、他ならぬおまえが証明したじゃんか。
そりゃそもそも生きてたにしても、おまえが居ないと思って過ごした10年を忘れるなんて、まだ無理だよ。


なのにこんな唐突に、しかもさらっと。
大体おまえ、記憶まだ曖昧なくせに。

ああ…だから『というか』か。


「起きてる？」

おれねぇ、長年のクセで、いいことを素直に信じられなくなってんの。
うん、おまえのせいだけど。

「いのおってー」

だからこれも、都合のいい夢かと疑ってんのよ、どう？

「もう…」

例えばイエスと頷いたなら、全てが想像いや妄想かも…で、ここはいつものおれのラボ。
待ち構えたステファニーに、決まり文句で怒られる。
そんなの辛すぎるだろ。

「戻ってこないと激しいのするぞ？」

「っ？！」

激しいのってなんだよ！

「……やぶ？」

「はいお帰り」

ポカンと見上げたら、ふにゃりとした笑顔があった。

「やぶ…」

「ね、これ嵌めてくれない？」

机の上のブレスレットを、手のひらに乗せられた。


だから…何でそんな唐突なの…。

「ダメ？」

…そんなわけ、ない。




「あっ」

手首に通し、留め具を引いては滑り落とすこと数回。
指先が震えて上手く行かない。日頃の器用さどこ行った、だ。

「落ち着いて、いのお」



おまえが言うな。

ばか。

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