Dekigokoro-no-page 8

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「ゃ…ちょ、まっ…て」

「ムリ」

体勢を崩した伊野尾をマットだけのベッドに押し倒し、衝動のまま貪れば、逃れようと必死な姿が更に煽る。
俺の告白が尾を引いてるのか、今一反応が鈍いのをいいことに止まらない。

「ゃぶっ…」

「待てねぇ」

火山みたいに幾らでも噴き上がる、こんな激しさが自分にあったなんて。
きっちり留められたシャツのボタンに手を掛ければ、流されそうだった伊野尾の抵抗に躊躇いがなくなった。

「まってって…のにっ！」

渾身の押し返しに動きが鈍る。その隙を逃すこいつじゃない。
勢いのままグイーッと押し返され、滑るように逃げ出した身体が立ち上がる。

「このっ…けだものっ」

いや、乱れたお前もそれはそれで…。

「いやごめん、悪かったって！」

つい溢した本音に、無言で振り下ろされた手刀を避けながら手を合わせた。だって仕方ねぇよ！

「何がどう仕方ないって？！」

「可愛いくて」

「っ…！ど阿呆っ！」

うんうん、真っ赤な顔で言われても説得力ゼロだけどね、蒸し返すのも何なので黙っとこう。

「あ」

「なに」

ボタン留めちゃうのか。勿体ねー。

「やぶさぁ…」

バレた？
いや思い切り溜め息吐くなよ。

「言っとくけど、理屈じゃないぞ」

言うなれば本能に任せただけで、データに残すとか言うなよ頼むから。

「そんなの判ってる。…てか、報告とかしねぇわこんなこと」

「じゃ…なに？」

呆れ顔がスッと真顔になる。思わず見惚れた。

「おれを変化させたいの？やぶは」

「へんげ…ぁあ！」

愛して、愛されたい。
愛されて、愛したい。

我々の営みでは、どちらの想いが先になるかが変化の目安になる。
とは言え、そんな理屈はすっ飛ばしてたわけで。

だって単純明快だから。

「…俺は、伊野尾を欲しいと思う」

正直な気持ちだ。

「でも、女性型にしたいとか、そんなんじゃなくて」

伊野尾は黙って聞いてくれる。

「何て言うのかな…そのさ、」

正直なところ、この気持ちが何処に基づいてるかはどうでもよくて。
過去の想いも、新たに生れた想いも全て含め。

「俺は伊野尾慧を愛してる…というか」

息を飲んで、また目が落っこちそうに見開かれる伊野尾を腕に囲った。


「俺と生きて欲しい」

あ、違うか。

「俺と一緒に、生きてください」



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