Dekigokoro-no-page 8

3 ページ19

kota.


まぁそんな経緯があって。

リョースケと名乗った犬も人型を取れるのが判り、今ではむしろ、そっちのが普通になりつつある。

てかみんな人型だと狭い。


二人(匹)は種族が違うらしく、リョースケは炎のような紅い毛並(かみ)と、濃い目に淹れた紅茶のような目をしてる。
すっげ美形なんだそうだ。ヒカルとユートは絶賛してたし、何となく判るけど。

俺の好みはどっちかってーと…。

ま、まぁいいや。

その見事な毛並を狙われることが多く、リョースケも拐われたが逃げて来たらしい。
これはヒカルの受け売りだけど、リョースケの毛並みはかなり上等で、しかもまだ若いからその価値は相場の何倍にもなるんだそうだ。

そもそも『相場』が判んねーけど。

俺も似たような立場だと言ったら、親近感持たれたみたい。そしたらユートの視線が痛ぇんだよ！何でだ！


ヒカルの側で、見よう見まねで料理を覚え、今じゃすっかり料理番を引き受けてるコイツ。
小さいし、仔犬だと信じて疑わなかったら、実は歳上だった件。
身体はあまり大きくならない種族なんだってさ。

メシもおやつも、間違いないモンが出てくるので、俺もユートもリョースケが料理番てことに勿論異議はないわけです。


「出来たのこれで全部？」

甘い匂いから逃げる口実に、籠を持ち上げた。
意外と器用なユートが編んだ、可愛い籠一杯に詰められたクッキーは、ヒカルの提案で店の売り物になってる。これが結構な収入になってんだよな。

物を売る→売り上げ→儲け。みたいな図式は何となく覚えた。
ユートに言わせると、ちょっと違うらしいが気にしない。

「冬…近いよな」


端的に言えば、同じだけの嗅覚を持つ者同士、言葉なく通じる。



.

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す