八十二 ページ35
雄也.
次の日。
「ああ雄也、やっといた」
「お美代さん?」
パタパタと慌てていた彼女が、言うが早いか俺に平たい菓子器を押し付ける。
「これお茶室に持って行って。ご隠居様が今点ててらっしゃるから」
「は?ぇ?」
何を問う間なく、忙しなく来た廊下を戻ってしまう彼女。
……要は持って行きゃいいんだな。
母屋から、数歩の渡り廊下を挟んだ奥にある小部屋。
裕福な家には大抵設えられている、身丈半分程の高さの障子の向こうへ声を掛けた。
「ご隠居様、お菓子をお持ちしました」
「お入りぃ」
屈んで入るんだよ、の言葉に疑問を覚えながらその通りにすると、小ぢんまりとしているが圧迫感はない。へぇ…中はこんな感じなのか。
「初めてかい?こんな場所は」
「はい。これをお美代さんから頼まれました」
菓子器を差し出すと、頷きながら蓋が開けられる。中には一見して高級そうな菓子が入っていた。
「ふむ、中々だ。まぁまぁ一服していきなさいよ」
辞そうと浮かせた腰を、そんな言葉で引き留められる…とは思わなかった。
(な、何でこうなってんの)
そもそもお美代さんの代わりに、菓子器を持ってきただけだ。誰か来るのかと思いきや、そんな気配もないし。
作法なんか知らないと言っても、このお人には何ら通じず。ええい、開き直れ!とばかりに座っていると、流れるような所作で茶を点てたご隠居様が、俺の前に茶碗を静かに置いた。
「こうして、こう飲む。お菓子も食べていいんだよ」
「はぁ…」
空気茶碗で教わる通りにして、恐る恐る一口含んでみる。
番茶とは全く違う、えもいわれぬ香りと味に、多分妙な顔をしてたんだろう。
楽しそうに笑いながらご隠居が、「そういえば」と続けた言葉は中々衝撃的だった。
「まだ慧をモノにしてないのかい?」
「っ?!」
「おやおや大変!生憎水がなくてねぇ…そうだそうだ」
ゲホンゲホンと派手に咳き込む俺に、呑気にかますご隠居が控えの茶碗に熱湯(!)を注ぐ。
「はいこれっ」
じゃないよ火傷するだろ!ああもう、何処からどう言えばいいってんだー!
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夏夢(プロフ) - ましろさん» はぃい(^^;元気な爺様ですわwさーて坊っちゃんが先か、紫さんが先か。次章で何とかなればいいんですけども(^^;移行先でもまた遊んでくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - たくさん更新〜♪ ご・隠・居・さ・まったらぁ(≧∀≦) どんだけ浮かれてるんですか(もっとやってよくってよ) 坊っちゃんそろそろ限界ですかね? 使用人お三方、良い味出してる〜!続き楽しみです(^-^) (2021年6月13日 12時) (レス) id: 8371985186 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» スキップ、って素直に書けたら楽なんですけどねぇ(日本語縛りの壁w)ひか先生も通ってきた道なんで、慧ちゃんの気持ちがよくわかるのかもw次章もぜひ遊びに来てくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - きたきたきたー!更新ーー!!やはり、そうだったのか!ひか先生さすがだわー。御隠居は絶対スキップしながら言いふらしてんだろーなー。女三人の会話も…いやぁ、色々気になるわー。移行先、どんなことになってるかなぁ。楽しみすぎる! (2021年6月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 大ちゃん益々隠密めいてきたですwwwそんでねみるさま、そこはほら、これからに繋がるのよぉおお( 〃▽〃)気合い入れて頑張るぞっ( ≧∀≦) (2021年5月24日 19時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2019年8月29日 8時