六十三 ページ16
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『もう暫く泳がせるから、このことは他言無用だよ?』
軽く言われて場を辞した。わざわざ俺に茶を持ってこさせた意図は、あの話をするためだったのか…。
ハナから俺は、疑いの目から外されてるらしい。ただそれだけのことなのに、この沸き上がる喜びは、何という気持ちなんだろう。
ついぞ味わった事のない幸福感…匙加減一つ違っていたら、今ここにいなかった俺。
「そう思えばあいつらにだって感謝できるな…」
「なーにぶつぶつ言ってんだいっ!」
「いってぇ!」
バーン!と背中を叩かれ振り返れば、立っていたのはお清さんだ。
「このくらいでよろけるなんて、あんたもまだまだだねぇ」
いや、大概はよろけるだろ。
「それよりこれ、宏太さんが甘かったってさ」
ほぼまんま残ってるかりんとうを翳せば、彼女はケラケラと笑い飛ばす。
「実は加減を間違えてねぇ、おっと、内緒だよ?」
そんなの若旦那に出していいのかよ!
俺の顔で判ったのか、黙ってるんだよ、と笑顔で肩を叩かれた。
「はい…」
「いい子だねぇ雄也は。あんたくらい素直な子ばかりなら、雇う方だって心労もないだろうさ」
ついてこいと目顔で言われ、台所に足を踏み入れた。
篭から木の器にかりんとうを移し、茶器と共に受け取ると、「番頭さん達にお三時だってね」と片目を瞑られた。
ま、これが付き合いってやつだよな。
平和なもんだ。
…少なくともお清さん、大番頭の定治さん、そしておそらく宏光さん辺りは知ってる。盗人が誰なのか。
そして俺にも…予測はついた。
もしかしたら大さんも知ってるか。
「大馬鹿野郎だな…あいつら」
空気の違いに気付いて、やめりゃあいいのに。
この時の俺は…いや俺たちは。
盗人に下手な情けを掛けたことを、後悔する羽目になる。
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夏夢(プロフ) - ましろさん» はぃい(^^;元気な爺様ですわwさーて坊っちゃんが先か、紫さんが先か。次章で何とかなればいいんですけども(^^;移行先でもまた遊んでくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - たくさん更新〜♪ ご・隠・居・さ・まったらぁ(≧∀≦) どんだけ浮かれてるんですか(もっとやってよくってよ) 坊っちゃんそろそろ限界ですかね? 使用人お三方、良い味出してる〜!続き楽しみです(^-^) (2021年6月13日 12時) (レス) id: 8371985186 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» スキップ、って素直に書けたら楽なんですけどねぇ(日本語縛りの壁w)ひか先生も通ってきた道なんで、慧ちゃんの気持ちがよくわかるのかもw次章もぜひ遊びに来てくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - きたきたきたー!更新ーー!!やはり、そうだったのか!ひか先生さすがだわー。御隠居は絶対スキップしながら言いふらしてんだろーなー。女三人の会話も…いやぁ、色々気になるわー。移行先、どんなことになってるかなぁ。楽しみすぎる! (2021年6月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 大ちゃん益々隠密めいてきたですwwwそんでねみるさま、そこはほら、これからに繋がるのよぉおお( 〃▽〃)気合い入れて頑張るぞっ( ≧∀≦) (2021年5月24日 19時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2019年8月29日 8時