五十九 ページ12
慧.
そんなある日。
母さまの法要が行われたらしい。
らしい、と言うのは、ぼくはその場に出なかったから。
まだ起き上がることもままならない身体を持て余し、寝台に大人しく横たわっていたのだけれど。
遠くに聞こえる読経を聞くうち、ぼくの身体から込み上げるものが、泪となってぼたぼたと溢れてきて止まらない。
身動きできず、ただ枕を濡らしていたぼくを浚うように受け止めてくれたのは、
いきなり駆け込んできた兄さまに、有無を言う間もなく抱き竦められた。
優しく名を呼ばれあやされているうち、ぎゅう、と深く抱き込まれて。
それまで触れられるのを嫌がるぼくに、兄さまを含めそうしてくる人は居なかったのに。
体温に驚いて、冷たくなってしまうことが怖くて。
腕から逃げようと暴れ狂うぼくを、兄さまは離さなかった。
どのくらい振りかで感じる。
冷たくなってゆかない、ずうっと温かいままのぬくもりを。
止まらないぼくの泪を受け止めていた兄さまも、やがてぼくの肩口に深く顔を埋めてしまった。
浴衣が温かく濡れていく。
その時音をたてて、閉じ籠っていた世界が壊れていくのを感じた。
ああ…そうだった。
母さまは、ぼくだけの母さまじゃなかった。
貴方もまた、母さまを失ったのに。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ぼくは兄さまに、ずっとずっと我慢をさせてしまってた。
その事にやっと気付けたぼくが『兄さま』と呼んだはずの声は、空気を
おずおずと背中に回した手を握り込み、トントン、と叩いた。
顔を起こした兄さまが、ぼくを穴が開くほど見詰めて、また痛いくらい抱き締めてきて。
ぼくを呼ぶ声は、何故か判らないけど嬉しそうに変わった。
ねぇ。
こんなぼくでも兄さまの支えになれる？
兄さまは嬉しくなってくれる？
ぼくのために母さまはなくなった。
けれどもぼくは。
生きていて…いいの？
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夏夢(プロフ) - ましろさん» はぃい(^^;元気な爺様ですわwさーて坊っちゃんが先か、紫さんが先か。次章で何とかなればいいんですけども(^^;移行先でもまた遊んでくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 20時) (
レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - たくさん更新〜♪ ご・隠・居・さ・まったらぁ(≧∀≦) どんだけ浮かれてるんですか(もっとやってよくってよ) 坊っちゃんそろそろ限界ですかね？ 使用人お三方、良い味出してる〜！続き楽しみです(^-^) (2021年6月13日 12時) (レス) id: 8371985186 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» スキップ、って素直に書けたら楽なんですけどねぇ(日本語縛りの壁w)ひか先生も通ってきた道なんで、慧ちゃんの気持ちがよくわかるのかもw次章もぜひ遊びに来てくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - きたきたきたー！更新ーー！！やはり、そうだったのか！ひか先生さすがだわー。御隠居は絶対スキップしながら言いふらしてんだろーなー。女三人の会話も…いやぁ、色々気になるわー。移行先、どんなことになってるかなぁ。楽しみすぎる！ (2021年6月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 大ちゃん益々隠密めいてきたですwwwそんでねみるさま、そこはほら、これからに繋がるのよぉおお( 〃▽〃)気合い入れて頑張るぞっ( ≧∀≦) (2021年5月24日 19時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏夢
| 作成日時：2019年8月29日 8時
