五十八 ページ11
慧.
今も、身体中が軋む。
今も、冷たくなってゆく母様の体温を思い出す。
あの頃明確に出来なかった感情は、大きくなって言葉を覚えるにつれはっきりしていった。
当てはまる言葉は
『恐怖』そして『絶望』。
初めは何が起きたのか判らなかった。
地鳴りがして、突然家の中に土や大きな木がいっぱい入ってきて。
気が付いたら母様が、ぼくに覆い被さっていた。
身動きできないままぼくを抱え、あやしてくれていた母様が黙ってしまって、何度呼んでも二度と一言も発しなくなって。
怖くて眠くて…。
遠くなる意識の中、母様と一緒の体温になってゆくのを感じた。
ぁあお腹すいたな…このまま眠ってしまえば、そんなことも判らなくなるかしら…。
意識は其処で、途切れた。
次に起きた時。
そこが何処なのか、直ぐに判らなかった。
喚きながら泣いてぼくに縋ろうと、手を伸ばしてくる大人達。
こわい。こわいこわいこわい!
嫌だ触らないで!
必死で逃げようとしたのに…ぼくのからだは動かなくなっていた。
恐慌になったぼくは闇雲に、
『あっちへ行って!側に来ないで!』
確かそんなようなことを繰り返し叫んだと思う。
取り押さえようと迫ってくる大人達が、目を見張り不審がり、新たなざわめきと共に見下ろしてくる。
大人達の目。
見下ろしてくる、目。
新たな恐怖。
えもいわれぬ恐怖。
それきり、ぼくの記憶は途切れてる。
思うに、気絶でもしたんだろう。
その頃のことは未だによく思い出せない。
日が経つにつれ回復し、この足はもう走れないと知らされた時も、涙は出なかった。
その前にぼくは、声を失っていたから。
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夏夢(プロフ) - ましろさん» はぃい(^^;元気な爺様ですわwさーて坊っちゃんが先か、紫さんが先か。次章で何とかなればいいんですけども(^^;移行先でもまた遊んでくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - たくさん更新〜♪ ご・隠・居・さ・まったらぁ(≧∀≦) どんだけ浮かれてるんですか(もっとやってよくってよ) 坊っちゃんそろそろ限界ですかね? 使用人お三方、良い味出してる〜!続き楽しみです(^-^) (2021年6月13日 12時) (レス) id: 8371985186 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» スキップ、って素直に書けたら楽なんですけどねぇ(日本語縛りの壁w)ひか先生も通ってきた道なんで、慧ちゃんの気持ちがよくわかるのかもw次章もぜひ遊びに来てくださいね〜(*^^*) (2021年6月13日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - きたきたきたー!更新ーー!!やはり、そうだったのか!ひか先生さすがだわー。御隠居は絶対スキップしながら言いふらしてんだろーなー。女三人の会話も…いやぁ、色々気になるわー。移行先、どんなことになってるかなぁ。楽しみすぎる! (2021年6月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - みるみるみるきーさん» 大ちゃん益々隠密めいてきたですwwwそんでねみるさま、そこはほら、これからに繋がるのよぉおお( 〃▽〃)気合い入れて頑張るぞっ( ≧∀≦) (2021年5月24日 19時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2019年8月29日 8時