花の聲 ニ

余話・何時の世も、女三人集まれば。 ページ49

九十四話、雄也と別れた後のお清さんたち。




清「ちょっと聞いとくれよ！」

美代「何ですぅ？ぁ、みたらし団子おいしいですよぉ」

清「どれどれ(食)うん、今日も美味しく出来てるじゃないか」

美代「よかったぁ。で、どうしたの」

清「さっき雄也にお三時頼んだんだけどそん時にさ…」

かくかくしかじか。

美代「ぇええ？ご隠居さまの早とちりなんですか？！」

清「と、言うより先走りだよあれは」

美代「あらまぁ。じゃあお祝い用の漆器類は一旦閉まっときましょうかねぇ」

清「そういう問題じゃないだろ、相変わらずずれてる子だね」

美代「だって使わなかったら邪魔でしょ」

清「それより雄也だけどさ」

妙「慎重すぎて焦れったいねぇ、あの子は」

清「いやだよお妙さんたら笑」

美代「そんなはっきり…」

清「あんたは芥子塗ってんじゃないよ」

美代「ぇえ？いっそ擦(なす)り付けたいですけど」

妙「うちの女達は激しいねぇ笑」

美代「だって…慧坊っちゃん全身で雄也が好きって言ってるのに」

清「雄也が尻込みしてんだよねぇ」

妙「使用人(あたしら)の立場で尻込みしなかったら大変さね」

美代「しなさすぎたのが二人程いたけど(嘲笑)」

清「全くだよ本当にっ。いやそれにしてもさ、未だに何もないだろ(断言)」

美代「えっ？そうなのっ？」

妙「まぁ心配は要らないだろうて」

美代「お妙さんまで…判るんですか？」

妙「産まれた時からお世話してりゃ、親じゃなくとも判ってくるもんだ」

清「ありゃあそろそろ坊っちゃんが痺れを切らすよ笑笑」

美代「…(年の功かしら？あたしにはさっぱりだわ)」

妙「さて…そろそろ腰を上げるかね」

美代「今夜は何にします？」

妙「確か昨日豆腐を買っといたかい」

美代「ええ」

清「湯豆腐にでもするかねお妙さん」

妙「そうしようかね。お美代、玉子を買いに出とくれ」

美代「はぁい」




籠を持ち、外に出ると冷たい空気が肌を刺す。
ほぅ、と吐く息はまだ白い。
暗くなる前に急ごう。
歩きだしながら、台所の隅に鎮座している漆器類の箱を思い出した。
実は微妙に邪魔なのだ。

美代「ほんと…早いとこ纏まって欲しいものだわね」

あたしの気がすっきりするためにもさ。


カタカタと下駄を鳴らし、玉子屋までの道を急ぐお美代なのだった。



おしまい

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