花の聲ー日々綴りーその２

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雄也.

駅には人がごった返している。

粋な着物に帽子と外套を合わせ、箱のような鞄(トランクと言うらしい)を持つ人。
大きな篭を背負った商売人らしき男女。
大人たちの足元で走り回る、育ちの良さそうな子供たち。
洋装、着物。思い思いに着飾った婦人たち。

老若男女が行き交う駅で、人波に慣れない慧さんはさっきからずっと、俺と宏太さんにしがみつき固まってる。

「大丈夫か慧？おんぶするか？」

宏太さん…普通に言いましたね。

「けーい、深呼吸しよう」

ゆっくりね、と先導され、光先生に合わせて息を整える。

「良くできました。大丈夫、怖くないですよ」
「そうだぞ慧。俺はいつもこうして買い付けに行くんだよ」
『兄様、いつもこんな？』
「ああそうさ、もっと混んでる時もあるぞ」
『すごいねぇ！』

光先生と目配せ、少し離れた。

「たまには役に立つね」
「いやいや…助かりましたよ？」

宏太さんの話で慧さんの気を逸らしている間に時間となった。いよいよ汽車に乗り込む。

最初は汽笛に驚いた慧さんも走り出すとはしゃいで、人混みの怖さもすっかり忘れたようで一安心だ。


やがて眠ってしまった彼に膝を貸しているうち、景色は広々とした平地から山へと移り変わる。

しかし…やることが大胆だよなぁ。

真四角に仕切られた席は向かい合わせで狭い。ご隠居さまと旦那さまは俺たちの後ろの席で、静かだ。

揺られているうち眠気がやってくる。
見やれば向かいの宏太さんも光先生も、目を閉じていた。

まだまだ時間は掛かるんだよな…。

少しだけ。

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