花の聲ー日々綴りーその２

お花見をしよう！ ページ1

雄也.

「お花見をしよう！」




水温(ぬる)む。

朝の水も徐々に冷たさが和(やわ)らぐ季節。




朝飯を終えたご隠居さまが、食後のお茶を啜る一同を見渡しのたまった。

ポカンとした皆さまの中、さすがの立ち直りで旦那さまが口を開く。

「父上様。お花見、とは」
「やだねぇお前さん！言って言葉の如しじゃないか！」

どこかで聞いた言い回しだな。

「家族旅行でお花見と行こう！」

かぞくりょこう。

俺も含め、またしても理解が追い付かない。

『旅行っ！』

素早く理解した慧さんが、ご隠居さまの場所までにじりよった。

「慧！お花見だよ！おぅけい？」
『おぅけい！！』

頭の上で大きな丸をし合う二人…『おぅけい』て、何だ？？

「外国語でいいよ、って意味だよ」
「あ…そういう…」

ぇええ？！

あたふたと光先生と二人を交互に見れば、宏太さんが頭を抱えてる。

「先に帰ってこいってのはこの為か？」
「そうだねぇ」

何時もなら今頃留守をしている宏太さん。
仕入れを途中で切り上げ帰ってきたのは、三日ほど前だった。

嬉々として計画を話しているご隠居さま、わくわくを隠せず聞き入る慧さん。
脱力している旦那さまと宏太さん。

にこにこ笑って「支度はどうしようかねぇ」と光先生。



なにかこう…上下というか関係図というか…が垣間見えて、まだどちらにも属せない俺は、ただ引き攣った笑いしか出てこなかった。

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