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yb.


かたり。

軽い音と共に、茶托に乗った湯呑みが目の前に置かれた。





彼らを見送り、色んな意味で気が抜けた俺ら。
気を失ってるかと思えた伊野尾は眠ってる。
葉月さん曰く「かなり消耗しているだろう」との事なので、自然に起きるまでそっとしておくことにする。
このところずっとしんどそうだったのが、すっかり抜けた寝顔にやっと胸を撫で下ろした。


襖を開けたままにして、俺たちは手前の部屋に腰を落ち着けた。
口を付けた温かい茶が身体に染み渡る…。

「なんか…ホッとする」

「そうだね」

光と高木に頷いた。
だよなぁ…リアル特撮みたいなの見ちゃったんだし。

「薮くん身体は何ともないの?」

「ぁ?ぁあ…特には?」

それどころじゃなかったのもあるけど。
と、俺の様子を眺めてた光が一つ頷く。

「でも凄かったよな…俺あんなはっきり視たの初めてだわ」

そうだよ、それだよ!

「つか、(おまえ)はまだ素地があるじゃん。俺どっちかってーと鈍いのに」

「確かに薮はマイナスだよね」

「おい、だからそのマイナスって」

「だって広太郎さんにまっったく気付かなかったんだろ?」

「ぅっ。いや、普通わかんねぇよ!」

大体いきなり出てきたんだから!

「うーん…」

「高木?」

「…薮くんはさ、計様が女の人って思ってなかったんだよね?」

「…………うん」

そこは素直に頷いた。いやだってな?
俺には『伊野尾』としか認識もないし。
多少の違和感?があっても、それはなんて言うか…『伊野尾が可愛い』としか思えなかったから!

「……盛大な惚気をありがとう」

「おぅ!どういたしましてだ」

あ。
葉月さん(おばーさま)の眼前っっ!

「いやあの、これはですねっ、ぅわ!」

慌てすぎて座卓に足がぶつかった。茶が零れる!

「薮くん落ち着いてっ」

「拭くもの拭くものっ、すいませんタオルか何か…」

三人三様わたわたしてると、突然高らかな笑い声が響いたので固まった。

「愉快ねぇ貴方たち!ほら、これをお使いなさいな」

側のティッシュケースを渡され、光が零れた茶と濡れた机や茶托を素早く拭く。
騒いだ割に大した感じじゃなくて、思わず深い息を吐いた。

布巾で改めて座卓を拭き、淹れ直して(高木達の分も)くれた湯呑みには、湯気の立つ緑茶が再び揺れた。

「すいません…」

「大丈夫ですよ」

言いながら、そもそものきっかけにまた暴れそうなんだけどっ。

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夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» こちらこそいつもありがとうございます😊そうですね、紫さん他の3人よりちょっぴり大人です。次章もぜひ遊びに来てくださいね〜☺️ (1月12日 21時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - 更新ありがとうございます。紫さんが色々と紳士的な対応でいいなって思っております。この先現実世界で何が起きるのか楽しみです😊 (1月12日 19時) (レス) @page49 id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 可愛い黄色さん💛お持ち帰り案件ですよねっ🤭さて、現実世界でなにが起こるんでしょうか😅次章をお楽しみに〜😊💕 (1月12日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 泣き上戸な黄色さん可愛すぎです🤣どうにも『さわり』が気になるところですが😁平和の戻ったふたりのこれからのお話も楽しみです〜✨ (1月11日 21時) (レス) @page50 id: f14529ed1c (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 計さまったらさらっと謎を残して逝かれましたねぇ😅ぇええ、そんな嬉しいことをありがとうございます😆書けたらいいなぁ😊💕 (12月22日 21時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏夢 | 作成日時:2023年7月23日 22時

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