78 ページ30
yb.
冷茶の爽やかさに身体が落ち着く頃を見計らい、お祖母さん…葉月さんは、ちらりと右側の奥間を見やる。
「まだ目覚める様子はないですね…少しお話をしておきましょう」
その言葉に、俺たちはそれぞれ居住いを正した。
彼女は座をずらし、後ろにある飴色の箪笥の小引戸を開け、何かを取り出した。
それは細長い箱だ。まさかあの絵？
無意識にガン見してれば、中に収まってる巻物をしゅるりと解いて見せた。
「我が家の家系図です」
家系図。巻物に墨字。しかもやたらキレイなんだけど。
「これは複写ですよ」
にこりと微笑まれ首を竦めた。ですよねぇ！
「本物は劣化もあって扱いが難しいので、数年前にこうしたの」
劣化…そうだよな。ゆうに三桁の年月が経ってるんだろうし…。
(と、いうことは…あの掛軸の絵って…)
「ここを見て」
飛びかけた思考が弾ける。
「あ」
思わず出た声に頷かれ、まじまじと見つめた
縦書きの家系図。
その中ほどに、記されていた。
『計』と。
父母から枝分れした線は、『計』に兄弟姉妹がいたことを記してる。
彼らには各々伴侶や子供の名が記されているが、『計』の名には丸囲いがあり、更にバツ印が付いていた。上下をざっと流し見れば、ポツリポツリと同じような物がある。
「早世した方々のようですね」
ああ、そうか。て、ことは『計』も…。
「今となっては全員バツ印ですけれど」
「確かに」
お茶目な物言いだけど声は優しい。つられて笑い、改めてその字を見つめる。
「計…って、こう書くんだ」
口にすると何故か懐かしく、切ない。伊野尾の名前と同じ発音なのに。
「似て異なる名前だったんですね」
光、それ俺が言おうとしてたヤツ！
「力的にはどうなんですか？」
「以降には、この方以上の力を持った者は出ていないようですね…」
高木、それも俺が…まぁいいや。
そうだよ、そもそもその…。
「計様の…伊野尾家の力とは、何なのでしょうか」
だから高木ぃ！俺のターン！
出遅れて地団駄(心境)、な俺をチラ見した葉月さんが、笑いを堪えるかのような顔をした。
しかし直ぐに引き締まると、我々の顔を一通り見回して。
「我々に引き継がれてきた
数秒の沈黙。誰ともなくゴクリと喉が鳴る。
「先見、というものです」
その言葉は、いっそ厳かに告げられた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 186人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» こちらこそいつもありがとうございます😊そうですね、紫さん他の3人よりちょっぴり大人です。次章もぜひ遊びに来てくださいね〜☺️ (1月12日 21時) (
レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - 更新ありがとうございます。紫さんが色々と紳士的な対応でいいなって思っております。この先現実世界で何が起きるのか楽しみです😊 (1月12日 19時) (レス) @page49 id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 可愛い黄色さん💛お持ち帰り案件ですよねっ🤭さて、現実世界でなにが起こるんでしょうか😅次章をお楽しみに〜😊💕 (1月12日 8時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 泣き上戸な黄色さん可愛すぎです🤣どうにも『さわり』が気になるところですが😁平和の戻ったふたりのこれからのお話も楽しみです〜✨ (1月11日 21時) (レス) @page50 id: f14529ed1c (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 計さまったらさらっと謎を残して逝かれましたねぇ😅ぇええ、そんな嬉しいことをありがとうございます😆書けたらいいなぁ😊💕 (12月22日 21時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夏夢
| 作成日時：2023年7月23日 22時
