Dekigokoro・別館５

背中の真ん中。(tkin) ページ5

tk.


伊野尾くんの不思議な習性。


て、言ったら大層なもののようだけど。

「たかきぃー？」

「はーい行くよー」


今夜は久し振りにウチでお泊まりなんだ。
浮かれる気持ちそのままに身体もくっつけたいけど、そうは行かないこのご時世。
今チョー現実、伊野尾くんの脱け殻(ふく)にシュッシュッしてます。
終わったらハンガーに掛けて、と。

彼？寒がりの伊野尾くん(こいびと)は、まず風呂ね。
それでもいいんだ。ほかほかの伊野尾くんは満足げにすり寄ってきてくれるから。

……俺って健気。





「他は洗った？」

「ぉう！あーそこそこ、気持ちー」

ボディソープをたっぷり泡立てた青色のごしごしタオルで、彼の背中を円を描くように洗ってく。
犬のシャンプーと言うか、色気の「い」もないことは確か。

「真ん中念入りにやって」

「はいはーい」

うーん、召し使い？





「あったまったー！たかきあんがと」

置き服のパジャマの上にカーディガンを羽織って、早速ビールに行こうとする。

「待って待って、冷えちゃうからホットワインにでもしない？」

「甘いのやだよ」

「甘くないよ、大丈夫」

「作んの？」

「そう。だから温かいヤツね」

「ならいいや」

…ホント俺、ケナゲ(2回目)







お気に召したワインも、杯を重ねれば酔う。
いい感じにくてくてになって、キスを繰り返すようになるとそんなムードになって。

「ねぇ……」

「んぅぅ…？」

寝室で抱き合って、パジャマの裾から手を滑り込ませる。俺の髪をくすぐったがってか、後ろへ流すのを繰り返す伊野尾くんへ、囁くように呼び掛けた。

「俺に背中洗わせるの、何で？」

「へぁ？」

パサリ。掬い損ねた髪が視界を遮った。
鬱陶しいから結ぶか？

「別に…深い意味は…」

「ぇ、なに？」

手首に掛けてるゴムに気を取られてたら、するりとまた、伊野尾くんの指が髪を掬う。

「結ばなくていーの」

「いいの？」

「ん」

まぁ…いっか。後ででも。思い直して、また深くキスを重ねると、「だってさ…」と呟くのが聞こえた。

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