Dekigokoro・別館５

キレイの秘密(tkin) ページ37

※紫さん長髪です


in.

「たかきぃ、アレして〜」

寒さも増したある日。

ぬくぬくの高木の部屋で、ある希望を述べる。

「いいよ。好きだねアレ」

まぁね、かなり好きだね。



「ふぉわぁあ…てんごくいくぅう」

「出来ればソレ、別の時に言って欲しいけど」

「たとえばぁ？」

「ベッドん中」

ぅえ？まさかのド直球。

「ばっっかじゃん！」

くっそー、狙ったけどまんまと返り討ち食ったー！ちょーくやしいっ。




桶に張ったお湯の中。浸けた片手に、じんわり沁みる何かのオイル。
いい匂いでお気に入りなんだけど、何回聞いても名前を覚えられない。

視線を移したローテーブルには色々な種類の小瓶。
傍らには、手を乗せる為の小さな枕…クッション？どっちでもいいや…と、クリーム。

開店は気紛れ、客はおれ一人のサロン・ド・ユウヤ。

高木の友達にそんな仕事をしてる人がいて、やってもらったら気持ち良かったとか。

(それでおれにしたがるのもどーよ)

で、この諸々な道具を貰った(・・・)とかゆーのもどうよ。

(コイツのことだから、ちゃんと代金払ってるかもだけど)


手がキレイと言われる事は多々ある。
でも、実は裏にこんな事情があるわけ。

「はぁあ…きもちー」

「そう？腕上がったかな」

おれの手は、無骨な高木の手に優しくやんわりと扱われてる。

ヒマにあかせて彼氏の観察といくか。

長い髪を無造作に纏め、前髪には何故か赤いピンが止まってる。
(またしても)誰かから貰ったって、気にも止めず使うのがらしいっちゃらしい。

(タバコ咥えさせてぇ…)

ホンモノは煙たいからお菓子のヤツね。

繊細なコトしてるクセに男くさい仕草とか、おれにはない所に憧れる。

「どしたの？」

ふっと上がった顔はいっそ無邪気。
何だよもう、ギャップの権化め。

「見てた」

「ええ？飽きない？」

「全然」

「そっかぁ。よかった」

当然だろ。何年見てると思ってんの。

「お前は？おれの顔」

「飽きるわけないでしょ。はい、反対側」

差し出した、今度は右手。仕上がった左手は血色が良くなって、いい匂い。

「今度フェイスマッサージも覚えようかな」

「どんだけ極めんだよ」

「そりゃあもう、伊野尾くんのためなら」

いいのか、それで。





おれの彼氏は友達が多い。


彼らが惜しげなく教えてくれる技術は、専らおれに還元されてますけども。

「伊野尾くん？寝ちゃう？」

「寝ねぇよー」


まぁいいか。

色んな高木が見れるから。






end

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