dekigokoro-no-page 9

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yb.


ピシッと言われて口を噤んだ。
ちきしょー反論できねぇ。

そもそもこいつのプライベートって謎が多すぎるんだよ。

俺が知るのは高校からで、伊野尾と光(こいつ)は当たり前のようにつるんでた。
男女じゃないのもあってか、伊野尾と付き合うようになってからも普通に三人で行動してたし。
伊野尾の事は、下手をすれば本人より理解(しっ)てるし、随分助けても貰ったけど。

光(じぶん)のことは、聞かれれば答えるが、こいつ自身から発信はほぼしない。改めて聞くのも何となく憚られ、今に至るわけで。

「まぁ…方法がないわけじゃない」

「……ぇ？」

考え込んでたお陰で反応が遅れた。

「雄也のことだろ」

「ぁ、ああ」

そっか、そもそもそれを言いに来てたんだ。

「方法って」

態度のおかしい俺を訝ることなく、だからさ、と続けてくる。

「ちゃんと失恋させてやる…とかね」

どういう意味…と聞き返す前に、何かをリズムよく刻みながら言葉は続いた。

「ある意味、雄也が踏ん切れないのはいのちゃんに告白すらしてないからでしょ」

「…」

大学で知り合って、卒業を機に縁遠くなったなら自然に消化出来ていたかも知れない。

「だからその辺さぁ…俺らが頼んだからってのあるじゃんか」

「さっきの俺の話聞いてた？」

「聞いてました」

「まぁ一つの方法だけど」

言いながら今度はまな板を傾け、ボウルに材料を移してる。そしてまた刻む音。
料理に疎い俺には、何を作ってるのかさっぱりだ。

「あの子自分に向いてる好意に鈍いから」

「あー、同意」

そりゃ俺も常々そう思ってる。下手すると『自惚れちゃいけない』とか妙な方向に行くし。謙虚も時と場合なんだけどな。

「そんなとこも可愛いけどねぇ」

いやそれ、俺の台詞。何だよムスメ持った親かよ。

一瞬伊野尾って光の子か？と錯覚しちまった。ないない有り得ない。大体誕生日…。
あれ？光って誕生日何時だっけ？

とんでもない発想を飛ばした側から、新たな疑問が湧いて出た。追及しようとしたら、「何にしてもね」と呟きが聞こえ反射的に顔を上げた。

「雄也がどうしたいかだよ」

「…そりゃ、まぁ」

判ってはいるけどさ…。

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