dekigokoro-no-page 9

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yb.


「やぶ、高木はさ、まだおれのこと好きだと思う？！」


暫く唸ってたと思ったら、いきなり大声で言い放たれた。
…ちょっと斜め上からの問いに、流石の俺も思わず沈黙ですよ。
でも答えを躊躇したら、その一瞬で変なこと考えるからな。「えーと」とまず声に出した隙に高速で考えを巡らせた。

「好きって…」そういう意味で？含ませてみれば。

「うん」

即小さく頷く。

ああこりゃ真剣に悩んでるな。茶化したら実家帰られるヤツだ。
あ、ダメか。この場合光んトコ(じっか)も当事者じゃん。じゃ涼介達のとこ？

(いかん、事態が無駄に悪化する)

伊野尾は何故か、自己評価がめちゃめちゃ低い。己に向けられてる好意を感じないのは都合がいいんだけど、それが仇になる場合もある。今みたいに。

こうして口にするまで、多分かなり考えてたんだろう。
俺だっていくら鈍くてもまぁ…これだけ長く一緒にいれば判るよな。

「…俺は雄也じゃないからね、ホントのとこは判んないよ？」

前置きをすると、素直に「うん」と返ってくる。少し考え、ゆっくり問う。


「雄也は…お前に好きとか言ってきた？」

少し顔を上げたまま、伊野尾の目線が落ちる。考えてる唇にキスをしても、照れもなく暴れもしない。
これ、触れて欲しい時の本人無意識の癖。もちろん教えてないけどね。

「言われてない…と思う」

…だよな。こいつ、大学ん時俺を紹介することで、結果雄也の気持ちを見事に躱したし。
初対面の俺ですら判ったのに…鈍いのか鋭いのか微妙なとこだな。

「あのね、やぶ」

「うん？」

「例えばまだ、雄也がそういう意味でおれを好きとして。それが原因でひかるとのこと踏み込めなかったら、おれはどうするのがいいと思う？」

「ぁあ…」

それを俺に聞くかね。そんなのシカトだシカトっ。大体何年経ってるんだよ。
伊野尾の言う通り引き摺ってるとしても、そりゃもう雄也自身の問題だろ。

(って…言い切れないかも)

俺と光のせいでもあるよなぁ、それ。そもそも雄也の気持ちを利用してたもんな。

大学での牽制に始まり、切っても切れない職種に就いたのをこれ幸い、伊野尾に付く余計な虫どもの駆除頼んで…。

(ひょっとしなくても、雄也が伊野尾を未だ好きっての、俺らのせい？！)

…やっべぇ。

「やぶ？」

「ぁ、ああ」

もしかしなくてもこれ、非常にヤバみじゃないすか？

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