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理科室の虫取り網と虫かごを借りて、エーミールさんと外へと繰り出した。相変わらず天気はいいものの風が強くどこか騒がしい。ふと疑問に思ったことがあり、エーミールさんに聞いてみる。


「風が強い日って蝶などの虫たちはどうしてるんですか?」

「基本的には風がしのげる林や木の影で大人しくしていますよ。でも、迷蝶の可能性もあるのが怖いですね」

「迷蝶?」

「本来の生息地ではない場所に強風で虫が飛ばされてしまうことです。海外の虫が日本に来てしまったこともあるんですよ」

「そんなことが……エーミールさんのクジャクヤママユ、大人しくしてくれてますかね」

「どうでしょう…蝶にしてはそれなりに大きいので、飛んでいれば気がつくと思うんですけど」


近くの植木や家の壁まで、きょろきょろと見回しながら歩き回る。途方もないが、足跡をつけてくれるようなものでは無いため虱潰しに探すしかないのだ。

どこか元気のなさそうなエーミールさんに、その蝶について話題をもちかける。すぐ見つかるものでもないだろうし、雑談しながら探した方が彼の気も紛れるだろう。


「そのクジャクヤママユは、エーミールさんが展翅したものなんですか?」

「ええ、あれは俺が自分で採取して、生まれて初めて展翅した蝶なんです。俺、14歳まではドイツに住んでいたので」

「ドイツに…たしか、クジャクヤママユってそっちの方の虫ですもんね」

「そうです。当時日本に住んでいた祖父が隣のオーストリアに来た時に俺も一緒にそちらまで遊びに行ったんです。その時に祖父と一緒にそのクジャクヤママユを捕まえて、初めて展翅作業を教わったんです」


なつかしいなぁ、と呟いたエーミールさんの口ぶりから、そのクジャクヤママユは相当大切にされているのだろうと察せられた。これはなんとしてでも捕まえなくては。

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作者名:なーや | 作者ホームページ:http  
作成日時:2024年3月9日 12時

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