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｢これは私の見解で、とても非現実な話をしますが…八百万の神はご存知ですか？｣
八百万の神。
生物以外の物や植物にも魂が宿るとされている。それは100年経ったらとも言われているし、大事にされているものほど魂が宿りやすいとも言われている。
私の問いにエーミールさんは知っていると頷いた。
｢千差万別、この世のいかなるものにも神様がいるという考えのことですよね｣
｢そうです。今回の場合、蝶は元々生物ですからまた違う気もしますけど…標本を物として扱うならあながち間違いでもないと思うんです｣
標本=生物でもない気がするし。標本作りを趣味とする彼なら相当大切にしていたはずだ。しかもクジャクヤママユ…これあれじゃないか？さっきうっすら思い浮かべていた、国語の授業の蛾の名前がそれと同じだった気がする。たしかドイツの話だから、この辺では採れない貴重な虫だろう。
それを聞いたエーミールさんは考え込むように顎に手を添えてなるほどと小さくつぶやく。
｢つまり、蝶に魂が宿り逃げ出したということですね。有り得るんやろか、そんなこと…｣
｢あともう一つ、こっちは更に非現実ですし神様なんていう有難いものではないんですけど…ポルターガイストも有り得るかなって思うんです｣
続いてポルターガイスト。こちらは八百万の神とは違い、道理も何も唱えられていない、原因不明の現象だ。部屋にあるものが勝手に動いたり落ちたり、さらには突然起こる発火現象もこれにあたる。
｢こっちはこれと言った決定的な原因はないんですけど…｣
｢よく心霊現象だとか言いますけど、違うんですか？｣
｢一番言われているのはそれですけど、他にもその部屋にいる人の念力だとか言われているんですよ｣
｢えっ、つまり、俺が念力を出してると？｣
｢んまぁ、そういう事になりますけど…エーミールさん、霊感ってありますか？｣
｢ないですね、全く｣
｢あっ…じゃあちょっと違うかもですね｣
先程からエーミールさんの口ぶり的に、非現実的な…つまりはオカルト的な話をあまり信じていないように見えたので聞いてみたがやはり霊感がないタイプらしい。
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