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｢失礼します3年C組のエーミールと申します。オカルト研究部への依頼があり参りました｣
ご丁寧に自己紹介をした彼はどうやら3年生らしい。そしてまさか信じたくは無いが、彼の手にぶら下げられた袋を見てあの…と控えめに問うてみれば、察したらしい彼がその袋をこちらに差し出した。
｢これ、大先生からの依頼の報酬です｣
｢もしかして…エーミールさんは新聞部ですか？｣
｢はい、そうですよ｣
最近多いな！新聞部！
そう声には出さずにとりあえず彼から鬱さんの報酬を受け取る。中身はどうやら駅ナカなどでよく見かけるお菓子のようだ。
とりあえず、座ってくださいと私の向かいの席を進めると彼はこれまた丁寧に頭を下げて席に着いた。今までの依頼主でいうと、彼はFBさんに近しい雰囲気を感じる。どこか控えめで礼儀正しいというか。
｢では早速ですが、依頼について教えてもらえますか？｣
｢はい。実は…昨日の夜中、蝶が逃げてしまったのです｣
｢蝶？｣
飼っていた蝶でも逃げたのだろうか、と思ったがそれは無いかと首を振る。それならオカ研に来る意味が無い。先の話を聞けば、どうやら今回もオカルトらしい依頼内容のようだった。
｢実は蝶の標本を作るのが趣味でして。昨日も夜中まで作業部屋で展翅作業をしていたんですけど、その時に標本の蝶が逃げてしまったんです｣
｢展翅作業…！すごいですね。ついさっき展翅の動画を見ていたんですよ｣
｢えっ……あの、それってもしかして｣
はっとして彼はスマホを取りだして何やら画面を開いてこちらに見せてきた。そこにはつい先程見ていた展翅作業のASMR動画が映し出されている。
｢そうそう！この動画です。この人すごいですよね、音も映像もいいし、編集も丁寧ですし｣
｢実は…これ俺の動画なんです｣
｢え、そうなんですか！？｣
まさかこうタイムリーに動画主さまにお会い出来るとは、と思っていれば彼もまさかこんなところにリスナーさんがいるなんて、と照れくさそうに笑っていた。
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