【d!】バタフライ運命論【em】 (ページ15)

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「その蝶…生きてますよね？」

「そうですね…標本だったとは思えないくらい元気ですね」

「標本にするときって…〆ますよね？注射器とか使うんですか？」

「いえ、この手の蝶や蛾は道具を使わずに〆ることができるんですよ」

「え？どうやって…」

「そうですね…趣味でもない人の前でやるのは少しはばかれるんですが、見たいですか？」

エーミールさんがほんの少し声のトーンを抑えて、こちらを見る。どこか含みのあるような言い方をされて、クジャクヤママユに視線を落とした私は、はいともいいえとも答えられなかった。

「えっ、と…」

「ふふ、冗談ですよ。Aさん、実は虫が苦手でしょう？」

「ど、どうしてわかったんです？」

「そんな顔してたら誰でもわかりますよ」

「…すみません、ちょっと、苦手です」

「虫なんて得意な人の方が少ないですから、お気になさらないでください」

そう言って笑ったエーミールさんは、やはり先輩だからかどうしてか、大人びて見える。思わず子供っぽい自分が恥ずかしくなった。

「まぁ、気になったら調べてみてください。意外と簡単なやり方なんですよ」

道具を使わず、でも簡単…？とうんうん悩んでいる私を見てエーミールさんは楽しそうに笑っていた。

それから改めてお礼を言ったエーミールさんはまた後日、報酬を渡しにオカ研に行くと言ってくれた。