【d!】バタフライ運命論【em】 (ページ12)

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そう気づいてはっとする。
これ、もしかしたらエーミールさんのクジャクヤママユなのではないかと。

確証もないまま、私は蛾が停まっている窓とは反対側の窓を少しだけ開けて、顔を外に出し、その姿を確認する。しかし、ここで問題が発生。

「わっかんねぇ〜…！」

私にはこれがクジャクヤママユなのかが分からなかった。どちらかと言うと虫はあまり得意では無いし、さらに言えば蝶や蛾の種類なんて見分けられる程の知識は無い。せいぜいモンシロチョウが分かるくらいだ。

しかし、これがもしエーミールさんのクジャクヤママユなら、捕まえるチャンスは今しかない。ここで逃がしたら、もう二度とこいつとは出会えないかもしれない。そう確信して、私は急いで玄関に置いてあった虫取り網と虫かごを持ち、外へと飛び出した。

庭へと回り込み、窓に目をやればまだそいつはそこにいた。逃げるなよ…と雨風すさぶ中、そっと窓へと近寄る。

が。

「ちょちょちょ…！」

まるで私を弄ぶかのように、網が蛾の近くまでよったところでそいつは飛び立った。
顔に張り付いた髪を寄せて、そいつを目で追うと、既に家の敷地外へと飛んでいってしまっていた。

逃がせない。
エーミールさんが、大切にしていたものだ。

彼のクジャクヤママユだという確信は持てなかったが、何故か私は強くそう思ったのだ。

こんな嵐の中。普段だったら絶対に外には出ないはずなのに、私の足はほとんど無意識のうちに、その生物を追っていた。