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FBさんに手当をしてもらい、私たちは大きくため息をついた。事が一段落して、どっと疲れがのしかかる。
彼は恐る恐るベランダの窓を開け、外を見回した。
「いなくなってる…」
「FBさん、取り憑かれていた間の記憶はあるんですか？」
「ぼんやりだけど一応覚えてるよ。自分がオオカミになりかけてたとか、女の子抱えてあんなに跳べるとか…未だ信じられないけど」
「私もですよ。オカ研入って2年経ちますけど、今回は中々ハードな依頼でした」
「自分もまさかこんな大事になるなんて思ってなかったよ…」
散らかった床にFBさんが座り込む。ちなみに私はまだベットの上である。するとFBさんが私を見上げてそうえばと今回の件の根本的な話になった。
「オオカミの目的って結局なんだったんだろう」
「項を噛んだのを見ていなくなったということは…番になった事が関係あるんでしょうかね」
「番？」
「イヌ科やネコ科の生物ってオスがメスの項を噛んで番になるっていう話もあるんです」
「えっ…ええ！！？？」
話を聞いたFBさんが顔を赤くして口を両手で押さえる。思わず釣られて私も恥ずかしくなってきた。
「ほ、ほら、私たちはヒトですしその話通りにはなりませんよ。ね？」
「そ、そそうだよね、ごめん」
「それより、今回の種はFBさんに憑いてたオオカミですよね…なんで群れから逃げるようなことをしたんだろう」
「番が欲しかった…なら、群れの中で作ればいい話だし…」
ふと、西郷さんの言葉を思い出す。
＿＿＿オオカミの生態とFBさんについて調べる必要がある。と、彼は言っていた。坂本さんは、一匹狼という言葉を使っていたけど、FBさんと一匹狼…
「一人に、なりたかったのかも…」
「一人に？」
「一匹狼って言葉があるじゃないですか。きっとFBさんに取り憑いていたオオカミは、群れでの生活に嫌気がさしてその言葉通りのオオカミになりたかった…とか」
「なるほど…俺たちはそれに巻き込まれたってわけね」
私は普段一人だけど、一人になりたいと思ったことは無い。一人が苦ではないだけであって、なりたいと願うことは無かった。でももし、集団生活を強制されたとしたら。衣食住、必ず大人数を強いられたら、そのオオカミと同じように、そう思うのかもしれない。
あのオオカミは、きっと今回を経て一匹狼になれたのだろう。
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