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FBさんから10メートルほど離れた距離から彼の後をつける。なるべく音を立てないように、呼吸にまで気を配り、所々にある電柱に身を隠して彼の様子を伺った。本当にストーカーになったような気分がして、しかしこれも彼のためだと言い訳をつける。
それでは、私が言っていたもう一つの可能性とやらの話をしようか。さっき気になるところで文章を切ったことだ。彼が怪異を視認出来る、もう一つの可能性。
それは、
「っ…！？」
またまた文章が途切れてしまった。だが、それもそのはず、この光景を見て平然と話を続けられるわけはないだろう。
嫌な寒気が背筋を走り抜け、反射的に後ろを向けばそこには、オオカミの群れがいつの間にか姿を現していた。群れも群れ。大群。数百匹のオオカミが、人の住む住宅街に現れた。
視認することで彼処側にも自分の存在がバレ、敵視されるということがよくある。油断しすぎた。FBさんの観察に意識を集中力させすぎたせいで、彼らの存在に接的するまで気がつけなかった。
電柱に背を這わせ、考えを巡らせる。けれど、私自身には一般人と何ら変わりない力しかない。異形の物を撃退する術など持っていないのだ。
喰われる。
瞬時に感じたのは、そんな簡潔な死だった。
だが、そんなのは、杞憂でしか無かったようで。
「………え？」
私の背後にいたオオカミらは、私の横を素通りしていく。
まじか、スルーされた。
はっと本題を思い出して、前方を向けば、なんとFBさんの進行方向からも大量のオオカミが迫ってきていた。
しかし、そんな事実よりも、私は更に重大な事実を確認した。
彼の足元。正確には地面に伸びる影の形。
月に照らされ浮かび上がった彼の影は、紛れもない、オオカミの形をしていた。
もう一つの可能性、それは、FBさんが怪異に取り憑かれているという事である。
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