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トントンの案内により、私は医務室にやってきた。もしかしたらここが一番見慣れているかもしれない。何しろここには恋愛ゲームお決まりの情報屋がいるのだから。
｢君がAちゃんかな？｣
回転式の椅子に座り振り返った人物は、神と書かれた面布を付けた大柄の男性。柔らかい口調で声をかけてくれた彼こそ、このゲームの情報屋、しんぺい神である。
どうやら彼には既に私の事について話を通してくれていたらしい。
｢はい…！AAと言います｣
｢知ってると思うけど、俺はしんぺい神。みんなからはペ神って呼ばれてるから、好きに呼んで｣
「今日は簡単に紹介だけやから、明日からペ神に色々教えてもらってな」
｢よろしくお願いします｣
｢うん、よろしく〜｣
ゲームではこのままチュートリアル的な展開になるのだが、今回は挨拶のみらしい。全部が全部ルート通りでは無いことがわかった。現実とは恐ろしいものだ…何が起こるか予測できないのだから。当たり前だけど。
その後、医務室を出て私たちが向かったのはそのひとつ上の階の一室だった。扉を開けてくれたトントンにすすめられ、先に中に入る。
ある程度の広さのある室内には、タンスや机、ソファなど簡単な家具が並んでいた。
｢ここ空き部屋やったから好きに使ってくれ。足りないものあれば言ってくれればこっちで用意するから｣
｢はい！ありがとうございます｣
やはりここは私の仮部屋らしい。辺りをキョロキョロと見回して、目に付いたベットや窓、さらに天井に取り付けられた大きめの通気口を見てワクワクと胸が踊った。これからあのベットに押し倒されたり窓ガラスをぶち破られたりダクトから人がやって来たりするのだ。これが落ち着いていられるか。ここはスチルの宝庫である。
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