【d!】乙女ゲームにトリップとかそれなんて夢小説？【all】 (ページ11)

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ぼーっとしていたらしい私を見て、彼はこほんと咳払いをする。

「君の処遇についてやけど…結論を言うとこの城に住んでもらうことになった」

何を言われるか怖かったけど、良かった。どうやらルートを外れているわけではなさそうだ。

「グルさんの決定で、我々の情報を握る人物を野放しにしておくわけにはいかない。でも害を与えるようではなさそうだし、俺らの目につく所に置いて監視しよう、という結論になった」

「ありがとうございます…！」

「まぁ…話が本当なら気の毒やし、元の世界に帰れるよう手伝ったるわ。
但し、ただで住まわせるわけにはいかん。君には怪我をした幹部らの手当てや看病を主にしてもらう」

で、出た～！ご都合主義奴～！！

この物語、主人公はこの城で軍医的ポジションになるのだが、この話のミソは"主に幹部の"という部分。
そう、なんとこのお城。女性が一人もいないのだ。いや多分、お手伝いさんや下っ端の歩兵の中には女性がいる可能性はあるのだが、基本的にいるのは男性のみ。ゲームでは女性がいるような話は一切出てこなかった。今後分からないけど。

「君のこと、幹部以外に話す訳にはいかんからな。それに、大学生なんやろ？一般人に資料整理とか、ましてや前線に出てもらうのは無理な話やからそれでええか？」

「構いません。本当にありがとうございます」

「じゃ、自己紹介はいらんかもしれんけど…僕はトントンです」

「AAといいます。これからよろしくお願いします、トントンさん」

互いに自己紹介しながら、私はワンチャンを狙って右手を差し出した。すると彼は目を瞬かせて動揺しつつも、ゆっくりと右手を重ね握手をしてくれる。

「よ、よろしくお願いします…」

トントンは明らか目を泳がせて、小さな声でそう言った。当たり前だけど、手の大きさが全然違う。肉厚な手のひら…解釈一致です…ありがとう神様。

一部始終を見ていたオスマンが小さな声で「このどーてーめ」と、トントンを揶揄する。うっさい、と小さく反論したトントンの横で、なんとも言えぬ顔で目を逸らしたエーミールを私は見逃さなかった。