高校入学の彼は ページ36
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中学二年生の終わりくらいからだろうか。
俺は基本的に家には帰らなくなっていた。
学校を終えて帰宅するのは父方の祖母の家だった。祖母の家は俺の本当の家と同じ市内にあったため、距離はさほど変わりなく、俺はいつの間にか家に帰らなくなっていた。
｢こねちゃんおかえり。ご飯できてるよ｣
部活を終えて帰宅すると、祖母は決まってそう迎えてくれて、昔ながらの食卓には俺の好物が並んでいる。荷物を下ろしてすぐに座布団に座って、食事に手をつける。
｢おお、こね、帰っとったか｣
すると間もなく祖父も居間にやって来て、俺を見るなり笑顔で向かい側に腰を下ろす。祖父は山鳩色の和服にチェーンの着いた眼鏡を下げて、箸に手をつけた。
祖母は主婦、そして祖父は文学者だった。
文学者と言えど形は様々だが、祖父はその中でも主に小説を書く仕事をしていた。たまに翻訳家としての依頼もあったそうだが、基本は小説を執筆しており、彼の書斎の壁一面が本で埋まっている。しかも一部を除いて、ほとんどが祖父の書いたものだった。界隈では大きな人気を誇るらしい。俺の読書好きはそこから始まったのである。
高校受験を目前に控えたある日。俺は祖母に話をした。
｢俺、一人暮らししたい｣
これ以上祖父母に迷惑をかけないため、だけど家には帰りたくない。そんな俺の出した答えはそんな身勝手なものだった。
家にいたくない理由は単純。自分の居場所がなかった。両親の仲が悪い訳では無いし、目に見えて悪態をつかれる訳でもなかったが、それ以前に俺は居ないものとして扱われるのが当たり前だった。
｢高校入ったらサッカー辞めてバイトする。けどそれでも金が足りひんのや。せやから…｣
俺は祖母に頭を下げた。
祖父の収入の管理は祖母がしていた。それくらい互いを信頼し合っていたのだ。特に祖父は、稼いだ金を全額祖母に預けていたという事だ。それは当時の俺には到底理解し難いものだった。
祖母は珍しく真剣な顔付きで、正座をして頭を下げる俺の上から声をかける。
｢本当に、いいのね？サッカー、あんなに好きだったじゃない。それをやめてでも、一人で生活したいのね？｣
｢…せや。じゃないと俺、駄目になる｣
今思えば俺は、ただ、寂しかったんだと思う。その頃は子供ながらのプライドで、もう一人で生きていくのだと強がっていたが。
｢…おじいちゃんの所にいきなさい。ちゃんと、自分の意思を伝えるのよ｣
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なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (
レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると､まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです！！ (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
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