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『間もなく、打ち上げ花火、開始となります』
『皆さま、カウントダウンの準備を、お願いします』
放送で知らされた花火の打ち上げ時刻。いつの間にか周りは人だかりが出来ていて、皆が花火を今か今かと待ちわびている様子であった。
そして、10から始まる、カウントダウン。
『9』
『8』
『7』
『6』
揃いも揃って上を見上げ、すぐ隣にいるAも、花火の打ち上がる瞬間に顔を上げて待っていた。
「ご……よん……さん……に……いち＿＿＿＿」
小さな声でカウントダウンを刻む彼女の声。
一の合図とほぼ同時、打ち上げ花火の昇る笛の音が響いて。
そして、夜空に花が咲くように広がった赤い花火。
湧き上がる歓声。
最初は赤い花火。それから緑、黄、青と様々な色彩を放ちながら、とめどなく打ち上がった。
それからは音だけ。
花火なんて見ちゃいなかった。
火花に照らされた彼女の顔から、目が離せなくなって。
「ねぇ、シッマ…＿＿＿＿っ！」
相手の後頭部に手を添えてこちらに引き寄せた。
彼女の瞳には、極彩色の花火が咲いては散って、そしてまた咲いて。ほんの一瞬のはずのその情景がスローモーションに写り、そして瞼が閉じられる。
彼女の先の言葉を、口で塞いだ。
どこか綿菓子の味の残る、そんな触れるだけのキスをして、頭を抑えていた手を彼女の頬に滑らせて撫でる。
「………………し、っま…」
「誰も見てへんよ。俺らなんて」
見ていたとしても、誰にも、邪魔はさせない。
手を地面について、まっすぐと彼女の顔を見た。頬を赤く染めて、驚いたように目を見開いて、唇はほんの少し震えている。
「で、でも……び、っくり、した」
「なんか今、したくなった」
夏の暑さのせいにしたい。
けれど、俺の顔もきっと彼女に負けないくらい赤くなってしまっているだろう。
数秒後、彼女はそっと俺の手に自分の手を重ねて困ったように笑った。
「………今日は、おあいこだね」
「…せやな」
彼女と付き合ったことは、後悔なんてしてない。
ただ、どこか遠くへ逃げてしまいたくなる。
こうやって彼女に触れるのも、近くで笑顔を見ることも、遠くない未来では不可能になってしまうのだろうから。
彼女を連れ去って、この時が永遠と続くような、そんな場所へ。
そんなの、どこにもありはしないのに。
【夏】-終-
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なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (
レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると､まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです！！ (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
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