【d!】波に溶けたら【kn】 (ページ32)

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日が沈み暗くなり始めて、私たちは手を繋いで歩いてきた道を戻った。夜の海は朝にバスから眺めた輝きなんて持ってなくて、黒に近い闇が地平線まで広がっている。先導して歩く彼の金髪がやけに明るく見えて、その光に着いていく。

彼もどうやらバスで来ていたらしく、一緒に帰ろうとバス停まで向かうと、先にシッマの友達が待っていた。

「なぁに手なんか繋いじゃってんすかコネシマ先輩～」

「お二人とも目元真っ赤っすよ」

道すがら彼らについて話を聞いたのでもう誰が誰だか把握した。今先に声をかけ揶揄してきたのがゾムくんで、もう一人がゾムくんと同じく一年生のショッピくん。それと、グルッペン先輩ともう一人見覚えがあったのはトントン先輩だ。なぜ見覚えがあったのかと言うと、彼は生徒会の書記を務めているらしく、よく目についていたからだろう。

「仲直りできたみたいで良かったわ」

「仲直り、どころか友人の一線を超えたように見えるがな。おめでとうコネシマ。それはフィクションでも第一コミュニティでもないのか？」

「そ…その話は今はええやろ。余計なこと言うなやグルッペン」

「いやぁな、あのコネシマが恋愛。しかもめでたくお付き合いを始めるなんて、信じられんくてな」

グルッペン先輩の言葉に表情を暗くしたシッマは、別にええやろ、というとそれ以上は誰もそのことに関して何も言わなかった。
私は改めて助けてくれたことやゴミ捨てをしてくれたことにお礼を言う。みんなそれくらい気にするなと笑ってくれて、頭が下がる気持ちだ。

間もなくしてバスがやってきて、シッマはみんなから逃げるように私の腕を引いてバスの一番後ろの席まで行く。そこまで大きな車両じゃないけど、私たち以外に人はいなくて、みんなシッマと私から離れた最前席に座った。
一人を覗いて。ゾムくんである。

「おっ前…気使えへんやつやなぁ！？」

「だぁって大先生からA先輩がシッマのお気に入りって聞いてたから先に俺が取ってやろうかと思ってたのに、まさかあの間に付き合ってまうなんて」

「何くだらないこと言うてんのや！てか！そうやお前ら大先生とグルやったんか！！」

すると前方から「はい、グルです」と、グルッペン先輩がふざけて返事するから思わず笑ってしまった。和気あいあいとした空気の中、最寄りのバス停につくとシッマをが送らせてくれと一緒にバスを降り、みんなと別れた。