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数分ほど何も話さずに歩いた。私の手首を掴む彼の力は少し強くて、引かれるままに着いていく。ふと右に視線を移すと、長く続いていた波打ち際の端までいつの間にか来ていたらしく。そこでやっとシッマは足を止めて、一度手を離すと振り返った。
「…シッマ？」
「………悪かった」
小さくてもはっきりと私を見てそう言った彼の瞳は、空色に夕日の茜色が差し込んで、ゆらゆらと揺れていた。その言葉を聞いて、私は横に首を振る。
「…ううん、私こそ…ごめんね」
そう言うと彼は薄く笑った。その顔を見て胸が苦しくなり、下を向きながら私は今までの思いを告げた。
ずっとシッマと話したかった。笑った顔が見たかった。話せなくなったあと、すごく寂しくなって、やけになって口走った言葉を後悔した、と。
するとシッマは、私の両手を取って握る。彼の大きな手は、とても暖かかった。
「俺も同じやった。＿＿＿…なぁ、A。ずっと、言いたかったことがあんねん」
ゆっくりと顔を上げると、夕日のせいなのか頬を赤く染めた彼が真剣な眼差しでこちらを見つめていた。なに、と私が問いかけると、数秒の間を挟んで、彼はゆっくりと口を開き、こう言った。
「俺、Aのこと、好きなんや」
思いもよらぬ言葉に、思わずぐっと息を飲み込んだ。
私の返答を待たずに、彼は言葉を続ける。
「一年の夏頃から…なんやけど。ずっと…Aのこと、ええなって思ってたんや。最初は見てるだけで充分やった。でも、春になって、たまたま話す機会が出来て、それからよく話すようになって…見てるだけじゃ嫌になってん。
…俺だって、Aと毎日話したいし、笑った顔が見たいし…でもそれだけじゃないんや。こうやって手も繋ぎたいし、抱きしめたい、し…Aの、ずっと………そばに居たいんや」
ぎゅっと、彼が手を強く握る。
私の手に、彼の手の温度が伝わって、それが伝道するように広がっていく。
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