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「もうええわ、行くぞA」
「あっ、うん。じゃあ、みんなもお花見楽しんでね。テストお疲れ様」
三人に手を振って、歩き出した彼の後ろを着いていく。しばらくしてから、彼は少しだけ歩くペースを落として私の隣に並んだ。
「なんか…ごめんな。うるさかったやろ」
「ううん。ああいう男子のノリ？っていうのかな、良いと思うよ。見てて面白いし」
「それならええんやけど…アイツらの言ってたこと信用すんなよ」
「？うん、わかった」
お互い慣れてきたとはいえ、やっぱり二人の時は普段と違う。一体どっちの彼が本当の彼なんだろう、なんて思いもするが、きっとどっちも同じシッマなのだろうなと、それ以上は深く考えないことにした。
それから、いつぞやの池沿いのベンチに二人で座って、買った食べ物を頂く。買いすぎたのでは…なんて心配していたがそれは杞憂だったようで、私が食べきれなかった分は彼が何でもない顔でペロリと完食してしまった。育ち盛りの男の子ってすごい。
「A」
「ん？な…＿＿＿」
に。
不意にこちらに伸ばされた彼の手に、次の言葉は出てこなくて、私は反射的にぎゅっと目を瞑った。
「花びら、髪についとった」
「えっ、あっ、花びら…」
「もう散り始めてるんやな」
何も無かったように上を見上げる彼につられて、私も顔を上に向ける。少し心拍数の上がる心臓を知らないふりをして、私もその話題に乗った。
「確かに、ソメイヨシノにしては散り始めるのが早いね。最近暖かかったから咲ききっちゃったのかも」
「ほーん…ソメイヨシノっちゅうのはこれなんか」
「公園の外にあるのが寒桜で、中にあるのはほとんどソメイヨシノなんだ。そういえば、この公園に樹齢80年越えの大きいソメイヨシノがあるの、知ってる？」
「ああ、西側のちっちゃい山になってるところに一本だけあるやつか？」
「そうそう！近くで見ると圧巻なんだ」
「食べ終わったし見に行ってみるか？」
「うん！行こいこ」
池沿いの桜をゆっくりとした足並みで眺めながら、私たちは移動を始めた。
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