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恋の詩を私と違い切ないように解釈する彼の言葉を聞いて、少しだけ気になってしまったのだ。小さな好奇心だった。古文の勉強とか、ただ一方的に教えるだけかな、なんて思っていたら、思いのほか彼自身もしっかり詩に向き合って勉強する姿勢が見られて、思わず考えるより先に口から出てしまった。
そしたら、まさかの返答。
居らへん、とか、何言うてんの、とか。そんな返答をされるのだろうと思っていたから、思わずぽかんとした顔になってしまっただろう。
「…Aは、居らんの？そういう相手」
まさか、つい昨日までただのクラスメイトだった彼と、放課後に恋バナすることになろうとは。私が聞いてそれで終わりかと思えば、彼も案外乗り気な様子だったことに驚いた。
どう答えたらいいのか分からず、曖昧に返答する。
「どう、なんだろ…はっきり好きって思う相手は今のところいないけど…」
「………けど？」
「気になる人は…………いる、かも？」
待て。何言ってんだ私。かもってなんだ。
自分で思わぬ言葉が出てしまい、一度思考がフリーズした。目の前にいる彼は、少し瞠目した後、眉間に皺を寄せてさらに問い詰めてくる。
「………誰や」
誰だ。私も聞きたい。
私、気になる人とか、いたっけ。
とりあえず、誤魔化すためにこれ以上詮索されるのを避けるように答えた。
「そ、それはひみつ！シッマは？誰なの？」
「…そんなら俺もひみつや。教えへん」
つん、と拗ねたように口を尖らせた彼が可愛く見えて。それから数分、私たちは似たようなやり取りを繰り返していた。
そんなこんなで、勉強会一日目はろくに勉強出来なかったわけだけど、これからテストまでの平日の放課後はここで勉強会を開くことになった。
図書室には誰も来なくて、私もシッマも、その勉強会に誰かを誘おうとは一つも言い出さなかった。それが少し嬉しい気がしてしまうのは、きっと勘違いだろう。
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