その5 ページ5
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▽.
私が彼の家に共に向かう道中のこと。
狭い路地を抜けていく彼の背を見ながら、私はふとこんなことを思った。
殺されなくて、良かった…＿＿＿＿。
私より数十センチも違う背丈。逆三角形の広い背中。同い年の男子とはまた違く感じられる雰囲気。
本当に、死ななくてよかった。
そう思っていた時、彼が話し始めた。
「なぁ、君。殺されへんでよかったて思ったやろ？」
私の心を見透かすように、彼はそう言った。私が頷く前に、言葉を続ける。
「あの一瞬で簡単に死ぬことを選べる人間なんてそう居ない。いや、もし前々から思ってたんやとしたら、その辺りの屋上から飛び降りればええ話やし。」
そう分かったように話す彼に、私は違うと答える。
「確かに、殺されなくてよかった…とは思いました。でも、その理由は違います。」
「どうちゃうんや？」
「私……貴方に一目惚れしました。」
私が言葉にした瞬間、彼はピタリと足を止め、こちらに振り返った。
黄緑色の瞳が見開かれて、その中に私が映る。ぱちぱちと瞬きをさせた後、彼は素っ頓狂な声を上げた。
「はあぁ！？一目惚れ！？」
「一目惚れ…かも、しれないんです。私、恋したことないのでよく分かりませんが……」
「や、それ…ガチで言うとるんか？」
「殺してと頼んだその時は、本当に殺して欲しかったのかも知れません。ですが今は殺されなくてよかったって思ってるのは、貴方のこと、もっとよく知りたいって思ったから……っていう理由です。」
「なんや、それ……」
「でも恋したら、相手のこと知りたくなるもんじゃないんですか？いや、知りたいだけじゃなくて、もっと見ていたくもなります。例えば…貴方の瞳、とても綺麗だと思いました。」
そうまっすぐと瞳を見つめると、彼はそれを隠すようにフードを深くかぶり、ため息をついた。
「………目が綺麗だとか言ったの君が初めてやで……。まぁ、もう、なんでもええや…とりあえず早く帰ろ……仕事も終わったし…」
ちらりと見えた顔はほんのり赤く見えた。私の見間違いかもしれないけど。
さっさと歩き出す彼のあとを、私は置いてかれないように少し早歩きをしてついて行った。
【続かない】
-------------ｷﾘﾄﾘｾﾝ--------------
以上です！
私の作品読んでくださっている方なら分かるかもしれませんが、○○ティックシリーズの話です。なのでオチは決まっているんですけど、ここまで書いて満足してしまった…
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