その3 ページ21
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季節は蝉時雨もとうに止んだ秋口。虫の音の代わりに騒がしくなった校内では、文化祭が開催されていた。
「スマイルぅ！お前サボってねぇで仕事しろよ」
血みどろの包帯が巻かれた手で紙パックのお茶を飲みながら、クラスメイトのきりやんの方へと振り返る。
「だって俺、順番回ってきてないし」
「そうだけど、仕掛け戻したり通路整えたりやることあんだろ！」
高校二年。俺のクラスの出し物はお化け屋敷だった。教室内を暗幕や衝立で囲って、適当にお化け役が飛び出たり、ビックリするような仕掛けをしたりする。そんな感じのやつだ。
ゾンビ役の俺は今は休憩時間。包帯や傷のメイクはそのままに、上からブレザーを着てベランダに出ていたところ、裏方のきりやんに見つかってしまった。そんな彼の小言を聞き流して、ずず、とお茶を飲み干して紙パックを潰したところで、チャイムとともに放送が流れた。
『皆さんこんにちは、3年A組です。前売り券の呼び出しをします。焼きそば、唐揚げ、フライドポテトの前売り券を購入した方は、特別棟一階西側までお越しください。繰り返します…＿＿』
「あ、ちょうどいいわ。お前俺らの分受け取りに行ってこいよ」
「はァ？」
「前売り券、あいつらの分も俺が持ってるから。ほら」
財布の中から大量の前売り券を取り出して有無を言わさず俺に渡してきた。それを見るにどうやら先程放送していたもの以外の券もありそうだが。
「これ違う店のやつじゃん」
「ついでに行ってきてよ。じゃ、俺は仕事するから！」
よろしく〜、と暗幕の中へと姿を消したきりやんに俺はわざとらしくため息をつく。受け取ってしまった以上、行くしかないのだろう。なんなら実は俺も少し腹が減ってきた気がする、とスマホで時間を確認すれば既に昼を過ぎていた。仕方ない、行ってやるかと俺は特別棟へと足を進めた。
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