【実ｼ兄者】長編にならなかった話達【短編集】 (ページ3)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:1,551 hit

その3 ページ3

01-2

ビクリとして振り向くと、いかにも危なそうな男の人。ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて、私が捨てたゴミを靴で踏みにじる。

だが、これで慌てる私じゃない。
声をかけられたのは、べつに今日が初めてという訳では無いのだ。

前に声をかけられた時は、何も答えずに走って相手を巻いた。今まで勉強だけをしていたわけじゃない。元々、私は運動が好きだったし走ることには自信があるのだ。

「………」

今回も黙って走り去るつもりだった。

だったの……だけど。

走ろうと前を向いた時、前からも別の男の人に塞がれていた。狭い路地の中、挟み撃ちを切り抜けるのは不可能だろう。

そう思った途端、サーッと血の気が引き恐怖が身体を覆い、思わず手にしていたコンビニの袋を落としてしまう。

「あ……ぁ、、」

「そんな怖がらなくてもいいよぉ。おじさん達と遊ぼう？な？」

「おじさんにはまだ早くねぇか？」

「ははっ、それもそうだな。」

前後方の二人が私を挟んで会話を交わす。その間にも、距離を詰め寄られる。

「や、やだ……やだ、、」

先程まで死にたいかも、なんて軽々しく考えていた私はどこへ。今はリアルの恐怖に煽られて、立つのも精一杯なほど。

ガタガタと触れる足は動かず、一人が私の手を掴んだ。

その時、目の前にいる男から血飛沫が飛んだ。