【実ｼ兄者】長編にならなかった話達【短編集】 (ページ17)

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その3 ページ17

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夢主視点

「ぞ、ゾムさん…わっ…！」

出会って五秒もしない間に、ゾムさんが私を抱きしめる。片腕は首に、もう片方は脇の下に回され、ぎゅう、と力を込められた。
私は動けずにいる。

「ん～…っ、任務おつかれさん…。お、シャワー浴びてきたんか？なんか匂いがいつもとちゃう…石鹸の香り…」

耳の下、首にピッタリと顔をくっつけてすんすんと匂いを嗅ぐゾムさん。そして背中にあった手はだんだんと下にさがり、ズボンに指先が入ってくる。
そこまで来て、私はやっとゾムさんの服の袖をぎゅっと握りしめ、声を絞り出した。

「ぞっ………ゾムさん…！」

横にあった顔が離れて、フードと髪の隙間からぎらりとした黄緑色の瞳が私を捕える。
鋭い目付きで見つめられ、思わず声を上げそうになり、唾を飲み込む。いつの間にか身体は震えていた。

しばらくの沈黙の後、ゾムさんは満足そうな笑みを浮かべて、私の手を取った。

「ほな、飯食いに行こか！」

その手を振り払うことも出来ずに、私は尻すぼみにはい…と小さく返事をする。そして、ゾムさんは私の手を引いて、食堂に向かう。