【実ｼ兄者】長編にならなかった話達【短編集】 (ページ13)

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その3 ページ13

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書記長室と入口の札に書かれた部屋にやって来たAはノック無しで中に入る。

部屋の奥にある机には、大量の紙が積み上げられており、その中央に先程のインカムの音声の主がいた。彼女はその人物のいる机の目の前に立つ。

「こんにちわ。トントンさん。」

「…なんで呼ばれたかわかるよな？」

「その目の下の隈の深さを見る限り、今日で二徹目くらいかな？」

「なんで、ここに呼ばれたか分かるかって聞いとるんやけど。」

「徹夜なんてご苦労だね。睡眠欲には素直になった方が自分のためだと私は思うけどな。」

「A…っ、！！？」

問いかけを無視し続ける彼女に痺れを切らしたトントンが名前を呼ぶのが先か。彼女は目の前の机を素早く飛び越えると同時に、先程使っていたナイフを背後から取り出してトントンに飛びついた。
その勢いのまま、後ろに倒れた椅子ごとトントンは床に叩きつけられる。

「いっ……、！」

頭を抑える彼の喉元にナイフを当てる。浅く当てられた首から血が一滴流れ落ちて床を汚した。

「はぁ……」

彼は呆れたようにため息をつくと、素手でそのナイフの刃を握り、彼女から力ずくで奪い取る。
それに呆気に取られた彼女の胸倉を掴んで自分の上からどかすと、彼はゆっくりと立ち上がった。

右手から流れ落ちる血を握りしめた彼が口を開く。

「…なんでここに呼ばれたか、分かる？」

「…………分かるよ。ロボロの喉をぐちゃぐちゃにしようとしたからだ。」

「……そこ座れ。」

そう言われた彼女は大人しく床に正座した。そして彼の長ったらしい説教が始まる。