【d!】月の魔女と愛念の呪い【gr】 (ページ6)

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◇..

あまり長くもなかった階段から降りて、使用していた発光魔法を部屋のあちらこちらに飛ばして室内を照らす。
そこで、やっと目にすることのできた室内を見て、俺は目を見開いた。

やけに古びた家具や寝台には埃が溜まり、まるで何年も使われていない物置部屋のように見える。
そんな人気の感じられない室内の角に、人と思わしきものが倒れていた。警戒しつつも、俺はその人物の方へ歩み寄る。

「…おい、俺の声が聞こえるか？」

近くでそう声をかけるも、それに対する返事は何一つ帰ってこなかった。
古着を着せられた若い女性に見える。その証拠に、漆黒の髪を無造作に床に広げ、袖からは陶器のように白い手足が伸ばされていた。
肩を揺さぶろうと手を伸ばした先に、あるものを発見する。
彼女の右手の甲に、僅かに光る月の紋章が見えたのだ。

そこで俺は確信する。
間違いなく、彼女は魔女である、と。

科学魔道士の魔法術の紋章は皆同じであり、いつ紋章を授かろうが魔力に差があろうが紋章の柄が違うことはない。
それとは別に、魔女の紋章は誰一人として同じものは無い。その魔女の使用する魔法術の特徴などにより紋章の柄が違うのだ。

つまり、彼女の手の甲の月の紋章は科学魔道士のものでは無く、魔女特有の自分だけの紋章なのだ。

彼女が魔女となると危険度が増したような気がするが、どうやらそうでも無さそうだ。

目の前に倒れ込んでいる彼女はどうやら気を失っているらしく、俺が紋章を確認するために手を取っても全く反応しない。それに、紋章の輝き具合を見る限り相当魔力が弱まっているように思えた。

だが念の為にと肩を揺さぶり体制を変えさせると、先程まで髪の毛で隠れていた顔が顕になった。
そして、俺は息を呑む。