【d!】月の魔女と愛念の呪い【gr】 (ページ49)

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「孤児院からの仲間はトントンだけだ。だが、その頃はあいつとも心を許しあえるほどの仲ではなかった。基本的に一人で朝は目覚めて、食事を取り、眠る。そんな生活だった。それは最近まで同じで、気の許しあえる仲間は出来たが、ふとした時に自分は独りなんだと実感してしまう。」

でも、と俺はAの方を見つめて、ハッキリと口にする。

「俺は、貴女に出会って…朝目覚めて食事を取って、こうして何でもない時間を共に過ごして、やっと独りではなくなった。
本当に、心から感謝している。こんな言い方どうかと思うが、あの魔女狩りの日、貴女があの家にいたこと、今では本当に…よかったと思っている。貴女を助けたのか、俺でよかったと。そして今こうして隣で寄り添ってくれて、とても幸せだ。」

ここまで自分のことを包み隠さずに話したのは初めてだった。俺が自信を持って話し終えたのが先か後か、気づけば、彼女は瞼に涙を浮かべていて、その一秒後には頬にそれを流していた。
指先でその涙を拭いながら、彼女は口を開く。

「グルッペン…私も、同じよ。
エーミールさんとのお茶会の時…魔女集会についてのお話で、私は参加しないって、話したでしょう？私…自分の魔法のせいで、他の魔女に嫌われてるの…その魔法については、話したくないのだけど…。私も、ずっと独りで、売り出されて買われた後は酷い扱いばかりで…きっと、貴方が助けてくれなければ私はあの家で死んでいたと思うの。」

幾分か前のようにお互い手を取って、指と指を強よく絡める。余ったもう一方の手で止まりそうにない彼女の涙を拭えば、その手に彼女が手を重ねた。

「A、これからはひとりじゃない。そうさせない。」

「…ありがとう、グルッペン。」

そして、独りが合わさり、二人になった。