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◇..
首から提げた月の石を手に取り、少しだけ真面目な声色でAが口を開く。
「ねぇ…グルッペン。月の石って絶対に割れないほど硬いものなの？」
その問いに、俺はいや…と曖昧な返事を返す。どうやら彼女も俺と同じ疑問を抱いていたようだ。
「俺も思っていたところだ。石に詳しい訳では無いが、宇宙から持って帰って来れるくらいだ。おそらく絶対に、と言うほど硬度は高くないだろう。」
「やっぱり…この石、ほんの少しだけど魔力を感じるの。それに、さっきのお店の店主さん……」
「…ああ、あの店主…」
胡散臭すぎる。
そう声が揃って、2人で先程の店を振り返る。商店街に並ぶには違和感の感じられない外装をしているが、あの店主や店の商品。どれも何か臭う。
「まるで詐欺師みたいな奴だったな。名札には確か…チーノ…だったか。」
「…あの人、きっと魔女よ。」
「魔女？」
「私の知る中に二人、変身魔法が得意な魔女がいるのだけれど…。変身魔法を使う魔女は普段から変身しているせいで本当の姿が分かってないの。そのうちの一人、こそこそ人間の世界で暮らしてるって噂よ。」
「なるほど。なら、そのネックレスは…」
「魔法がかけられていて、割れなくなっているんだと思う。本物を使っているかどうかまでは推測できないけれど…」
わざわざ商店街の商品まで魔女狩りの検索が入ることはないのだろう。あの慣れた販売対応、恐らく前々からそれらの商品を売買していたに違いない。
「でも、呪いがかけられている訳でもないし、とても綺麗だからそんなの気にならないわ。ああいうずる賢い魔女は少なくないし。」
「そうか。それならいいんだが。」
Aが気に入ってるようならなんでもいいか。少しでも彼女にとって不都合なことがあれば事実を突きつけて返そうと思ったが、その必要はなさそうである。
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