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◇..
「では次の話に移りますね。魔女に関する書物の多くには魔女集会なるものについての記述が見られます。この集会は、実際にあるものなんでしょうか？」
Aは一瞬、ほんの一瞬動揺したように言葉を詰まらせた。そんな気がした。
が、Aはそんなのは見間違いであったように平然と紅茶を一口飲んでから口を開く。
「はい、ありますよ。魔女や魔物の中でワルプルギスの夜、と呼ばれる日が年に一度だけあるのですが、魔女集会はその日に行われるものです。確か、今月にありますよ。」
「今月！なるほど。ワルプルギスの夜は一番魔力の強まる日と言われていますよね。ああ、それなら、Aさんも参加されるのですか？」
するとAが少し困ったような、悲しいような表情をしつつ、笑顔で答えた。
「いえ…私は参加しませんよ。」
「どうしてです？」
「私が参加しても、他の方々に喜ばれませんから。参加しない方が良いのです。なので、その日も変わらずグルッペンと過ごすつもりですよ。」
ちらりと俺の方を見たAは優しく微笑んだ。いや、微笑むというより少し笑われたと捉えてもいいだろう。すると何か察したようにエーミールも口の端をつりあげた。
「ほう…良かったじゃないですかグルッペンさん。魔女集会は魔女が悪魔と契約する場所…いわゆる逢い引きの場とも言われていますしね。集会に参加しないなら安心でしょう。」
「…うるさいぞ、エーミール。お前も…」
「あら、私は何も申していませんよ？ただ参加しないと言っただけです。その日も夕飯は一緒に食べましょうね。」
そうして膝の上に手を添えられれば、他に言い返す言葉も見つからなくなる。そこでその手に自分の手を重ねるような勇気はなかったが、変わりに顔を横に逸らして呟くように返事をした。
「…当たり前だ。他に食事する相手はいない。」
「ふふっ。良かったです。」
その様子を見ていたエーミールが春だなと少々間抜けな声で渋々と言った。
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