【d!】月の魔女と愛念の呪い【gr】 (ページ22)

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◇.

彼は更に顔色を曇らせて、眉間に皺を寄せた。私にそう言われても否定しない彼は最初に私に挨拶した時と打って変わり、低めの声色で言葉を返す。

「何で…お前がここにおるん。捕まって売りに出されてから、ずっと地下におったはずやろ。」

私の事情を知っているということは、あの家の主と何か関係があるのか、はたまた飼い主に命令されて調べたのか。
個人情報を知られていようがそれを隠そうと気を揉むことは無く、涼し気な顔でそれに応える。

「グルッペンが助けてくれたのよ。貴方こそ、ここで人間の"フリ"をしてるなんて、笑っちゃうわ。何、飼い主様にそう命令でもされたの？」

「俺がここでそうしてるのは個人的に人工魔力の研究をしたいからや。それに…ンなこと言うたらお前だってそうやろ。月の魔女。」

「外でその名前はよして頂戴。グルッペンに怒られてしまうわ。」

わざとらしく困ったように頬に手を添えると、コネシマさんは豪快に笑いながら手摺りに手をついた。

「お前、グルッペンに付いたか。いくら優秀でも、あれの魔力は人工的なもんや。悪魔相手じゃあんなん一捻りやで。」

先程、私は彼にメナスのとこの犬だと言ったが、メナスは彼の主である悪魔の異名を指している。彼曰く、メナスとは対等な関係らしいが、私から見たら悪魔にいいように使われる犬のようにしか見えない。
と言っても、実際彼は"ティンダロスの猟犬"という名前の生物の子孫であり、人型からその生物に形態を変えることができるのだが。

menace＿＿＿＿脅威と呼ばれるその悪魔は、前に私に契約を持ちかけてきた事があり、それを断った後でも執念深いと言われているティンダロスの猟犬の子孫の彼を使い、幾度となく私を追いかけてきた。
しかし、長く続いた追いかけっこに耐えかねた私が、猟犬の姿の時の一番の武器である鋭利な舌を切り落としたのをきっかけに、彼とはそれきり会っていなかった。

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ティンダロスの猟犬とは
クトゥルフ神話に登場する架空の生物。太く鋭利な舌を持ち、異臭を放ちながら現れる。彼が現れる条件として、120度以下の鋭角が必要であり、逆に言えば曲線のみで生成された空間には姿を表せない。
詳しい姿は調べてみてください。