【ab】..＊.°-ひらりるりら-°.＊.. (ページ4)

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＊.

ドキリとして上を見上げると、虻川先生が子供のような笑顔でその本を手に取った。

ア「わっ、そうそうこれ！こんな所にあったなんて…。」

『その本、素敵なお話ですよね。私も大好きですよ。』

ア「えっ、読んだことあるんだ…。俺のお母さんがよくこの本の話ししててさ、気になって探したんだけどなかなか見つからなかったんだ。でもなぁ、勝手に持ち帰るわけにもいかないし…」

そう言ってパラパラとページを捲る虻川先生。表情は柔らかいが、何だか残念そうな顔をしていると思った。

そこで、私は提案する。

『私が借りて、中学視察している期間だけ先生に貸しておく…っていうのはどうでしょう？』

ア「え、でも、いいの？」

『はい。一人二冊まで借りれますし、探していた本が見つかったのに読めないなんて悲しいじゃないですか。…って言っても三日間だけですけどね。』

少し苦笑いを浮かべると、虻川先生がまた笑って私にこう言った。

ア「図書委員さん…貸し出しお願いします。」

その優しい笑顔が眩しくて、暖かくて、今でも忘れられない。

眩しかったのは、暖かかったのは、春の太陽かもしれない。
春うらら、そんな日に騙されてそう思い込んでしまったのかもしれない。

でも、でも…

高校三年になった今でも、あの笑顔が忘れられずにいるのです…＿＿＿＿。

三日後、虻川先生の視察が終わる日。
本を預かり、お礼を言われた。

それから、私は決めた。

進学先を、神代学園高校にしようと。

神代学園はそこそこの学力が必要だが、勉強なら大丈夫だという自信があったし、何よりまた虻川先生に会いたかった。
そんな不純な動機で進学先を決めてしまうなんて良くないことは分かってたけど、その時にはもう決意してしまっていた。

それから、私は猛勉強して、今の自分を変えることにした。
高校生になってからは、眼鏡をコンタクトに変えて、髪は清楚な雰囲気に、いつも笑顔を忘れずに、他人と関わることを避けない。

生徒会長になり、優等生として生活することを決めた。元々家のルールが厳しかったから、礼儀作法は充分備わっている。

それもこれも、虻川先生に認めてほしくて……。

私の青春時代は、"恋"という曖昧な理由で大きく動かされたのだ。