#17-3 ページ14
お風呂から上がったユナは、鏡に映る生白い自分の体をじっと眺めた。
脳裏にあの女性の姿が浮かぶ。
女性らしい、メリハリのある体。
幼い頃のユナが喉から手が出るほど欲しかった、長い手足に、すらりとしたスタイル。
パンツスーツに高いピンヒールを履いたその女性は、まさに「大人の女の人」だった。
背の高いジョングクと並ぶと絵になった。
それに。
ざっくりと空いたシャツの隙間から見えた胸元。
大人の色香とでもいうのだろうか。
対して自分はどうだ。
凹凸の少ない体。
縦に線が入った腹筋。
踊るために鍛え上げてきたこの体を、ユナは嫌いではない。
むしろ誇らしく思っている。
ただ。
ユナの胸の中心に真っ直ぐ走る古い傷跡。
それを指でなぞったユナは、そっと息を吐いた。
ユナが、胸元の空いた服を着ない理由が、そこに刻まれている。
幼い頃、ユナは持病のせいで、何度か手術を受けた。
この傷跡は、その時にできたものだ。
それから。
その傷跡を覆い隠すようにあしらわれた「かすみ草」と「錠」。
傷を隠したがったユナに、初めて母がそれらを施した9つのころから、ユナはずっとその二つを胸に刻み続けている。
植物由来の特殊なインクで刻まれたそれらは、数週間程度で消えるもので。
消えるたびに、ユナは新しく描き直している。
今は昔ほど、この傷跡を嫌悪しているわけではないけれど、このフェイクタトゥーはユナにとってお守りのようなものなのだ。
紺色のインクで刻まれたその模様を、指でなぞる。
ジョングクに「好きだ」と告げられるたびに。
ほんとうはずっと、その言葉に答えたかった。
あの優しい瞳に見つめられて、あの温かい腕に抱かれて、あの甘やかな声で、名前を呼んでほしかった。
でも。
ーーージョングクのことを考えれば考えるほど、ジョングクのことを想えば想うほど。
自分が彼の隣に立つ姿が想像できない。
ーーーあんなに美しいひとなのだ。
そんな彼の隣に立つのは、あの「ヌナ」のような人の方が、お似合いだ。
わたしには、足りないものが多すぎる。
バスタオルに額を押し抱いたユナは、唇を噛み締めた。
締め付けられるような心臓の痛みに、じわりと目頭が熱くなる。
ーーーでも、それでも。
やっぱり願ってしまうのだ。
彼の隣に立ちたいと。
彼の瞳に映るのは、わたしだけがいいと。
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kamome(プロフ) - みゆさん» ありがとうございます。そう言っていただけて、嬉しいです😊 (2023年2月3日 15時) (
レス) id: 7a5f009426 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - とても素敵な作品でした！続編楽しみに待ちます。 (2023年2月3日 6時) (レス) @page39 id: 0654fcd9f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kamome | 作成日時：2023年1月30日 4時
