003：理解不能 ページ4
「……ふわっ！？」
…変な声出た…
肩から手が離れたと思うと、すぐに目の前が暗くなり全身にあたたかさを感じた。
耳や首筋に息がかかってくすぐったい。
だ、抱きしめられてる…！？
一瞬遅れて理解した。
同時に考えてたことが吹っ飛ぶ。
頭か真っ白になって、体が石のように固まり動かない。
「お前の個性は一時的なものだろう？じゃあ、すぐ思い出すよな…」
「そそそそそうだとはおおお思いますがっっ！！」
「…なんだその話し方」
「と、轟くんがこんなことすすすするからでしょう！」
「敬語も」
「しし知らない人には敬語を使えって…」
あ。やばい。
言った途端に空気が変わるのがわかった。
「…知らない人、か」
泣く？泣くのか？
イケメンくんの泣き顔なんてそうそう拝めるもんじゃないからちょっと見てみたい。
なんて…
無粋なこと考えてしまったけど、轟くんは案外普通だった。
「敬語は禁止だ。俺のことも名前で呼べ」
「えっと…焦凍、くん？」
「…とりあえずそれでいい」
とりあえずってことは、いつもそう呼んではなかったのかな。
でも、いきなり幼なじみって言われても実感ないし、そもそもこの状況では冷静に考えることもできない…！
「着替えろ。飯食って学校行くぞ」
「うん…」
私の髪に顔をうずめたまま動かない焦凍くん。
「…」
「…」
「…なんだ？」
「離してくれないと、動けない」
「そうだな」
答える割には全く動こうとしないな、このイケメン！
心臓が飛び出そうな私の身にもなって！
「……あ、あの…」
「なんだ」
なんだじゃねーよ！
さっき言ったよ！
「は、離し「嫌だ」
「……は？」
しばらくこのやり取りを続け、やっと解放されたかと思えば時間ギリギリ。
バタバタと支度をして全速力で走る羽目になった。
…とりあえずわかったことは、
私の幼なじみだという焦凍くん
彼が何を考えているのかはさっぱりわからない、ということ！
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作者名：海月 | 作成日時：2017年6月19日 23時
