【実況者】こちら、本拠地です。 (ページ29)

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ラギが連行される少し前のこと。

ちょこちょこいろんな人に聞いてAの行った先を探していた。彼女は屋上にいた。でもまぁ何となく予想はついていたというかなんというか。視認したあと錆び付いたドアを引っ張り名を呼ぼうとした時。
夕陽で翳っている顔の凹凸と光の粒子の舞う髪の毛。そして憂い気味の表情にやけに見蕩れてしまった。これ以上進んでしまったら壊してしまいそうな儚い存在、でも進まないと。
焦燥感に駆られ声をかけると直ぐに応えた。

「……絡斗は？」

今あいつの名前呼ぶのかよ。本当は、まさか。と冷静さを欠いてしまった。

「アイツはお前のこと諦めた」

だから、と次の言葉を紡ごうとした時乾いた音と共に左頬に痛みを感じた。叩かれた。そう気づくのには数秒の時間が必要だった。見ると彼女は先程までの儚げな表情ではなく明らかな怒りを滲ませていた。

「絡斗が諦めた。だから、祢糸と付き合えってか？……ふざけんじゃねぇ…絡斗呼んできて。渋っても強制連行で」

「…なんで？」

「いいから、あくしろ。…連れてきたら、答え合わせするから」

思わぬ展開に掠れた声しか出ない。いや、ある意味コイツなら有り得て、でも…でも。
纏まりきらない思考のまま屋上から追い出されてしまった。

「振り回されてるなー…俺」

苦笑いをしつつ階段を下り、先に帰ってしまった絡斗を探しに行くのだった。