【実況者】こちら、本拠地です。 (ページ22)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:9,093 hit

#17 ページ22

壊してから、どれだけゲーム実況に救われていたのか、どれだけの人達に助けてもらっていたのかを知った。
例えて言うならば私の今までやってきたのはパッチワークのように柄が不揃いなものを色々な人と色々なゲームと一緒に縫い合わせて作ったようなものだ。不恰好ながらもようやく形になりかけたものを全部、自分の手でビリビリにして不揃いでも綺麗だったものが元に戻すことが出来ないくらいにしてしまった。もはや修復不可能、ゴミ同然。
だから私はそれでも直そうとするために来たと思われる二人を拒んだ。修復なんかしなくていい、偶にビリビリになったそれをいつか一人で眺めて少し胸を痛くしてそっとしまえるくらいの思い出でいい。だから、私の事なんか放っといてくれよ。
自分が発したのかすら分からないほど小さな声で拒むと二人は顔を見合わせて私を間にして二人とも座り込み、私の両肩に二人の頭を乗せてきた。
久々に感じた誰かの温かみと重み。それを意識したら無意識に心の声かあるいは実際に声に出したのか分からないが助けてと、そう言ってしまった。本当は思っちゃダメなのに、そう思う資格すらないのに。
心音と同期してとん、とんと背中を叩いてくれた。あー、ヤバいこれ落ち着く…。それがだんだんとゆっくりになりやがて止まった。そのタイミング見計らって私はなるべく明るく

「ごめんねが、ラギ。迷惑かけた」

そう言って座っていた姿勢から立ち上がって、クルっと振り返り急に立ち上がった私にびっくりして呆然と固まっていた二人の手を握って立ち上がらせる。
出ていかせるために背中を押すとそれを二人とも拒んで私の方向に向き直る。ラギが低い声で呻くように

「なぁ、なんでやめたの」

と言った。
答える気は無い、と示すために頭を振って無理矢理部屋から出そうとする。しかしその腕を取られて抑え込まれてしまう。

「なぁ、理由言ってくれ」

「言えないほどヤバい理由なの？」

「さぁ、ね。ほら帰った帰った」

「なぁ、本当に頼む」

「…執拗い奴は嫌いだよ」

余りにも執拗いので冷たく扱ってしまった。
二人とも頑なな私の態度に諦めたのか或いは呆れたのか、溜息を吐いて踵を返して無言で部屋から出てった。
…鍵閉めときゃよかったと思う。
部屋のドアの鍵さえ閉めてしまえばこんな風に言及されることは無かったし何より二人を傷つけることは無かったはずだ。
自分の警戒を怠っていたせいだと反省し、現実逃避をするためにベットに入り込み眠りについた。