【実況者】こちら、本拠地です。 (ページ21)

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季節は冬。近くの公園で生い茂っていた葉も枯れて寂しげな風景だけが残されていた。
錆び付いたブランコのチェーンを握りしめぼーっとする。すると、ねがからLINEが来た。いつものアイツなら仮眠タイムに入る頃、そもそも論アイツはよっぽどの用事がなきゃ連絡を入れないようなやつなのにとラギは首を傾げながら確認する。いつもは半ば閉じている瞳が文章を目で追っているうちに大きく見開いた。

「……マジかよ、あいつ」

すぐさまブランコから降り、指定された場所へ急ぐ。ゆっくりと進めていた歩はやがて全速力で走るほどとなった。
目的地に着くと既にねがはいた。

「よぉ」

「うん…急ごう」

何時になく二人の瞳は本気で。それほどまでに彼女は大切な存在で守らなければ、存在せねばならないものであった。
連絡先も、Twitterも何もかも消えてしまった後ではもう遅いかもしれないがせめてもの救いを、と二人とも思っていた。
程なくして彼女のマンションの部屋の前に辿り着き、二人同時にインターホンを押す。しかし返事はない。さてどうしたものかとねががぐるりと周辺を見渡しラギがドアノブに手をかけるとなんの抵抗もなく開く。
不用心なものだと思いながら乗り込む。殺風景なリビング、使い込まれた痕跡があるキッチン、洗面所、トイレと手当たり次第に扉を開けるものの全てハズレ。残った一つのドアの前では微かな息遣いと鼻を啜る音が聞こえた。
どちらともなくドアノブに手をかけ押し込むとぺたりと座り込んで俯きながら放心している状態のAが見えた。すぐに駆け寄り手を取ろうとするがAがその手をペシっと叩いて拒んだ。

「…A」

ラギがその名を呼ぶとゆっくりと顔を上げてふるふると首を振りやがて注意深く聞かないと聞き漏らしてしまうような小さな声で

「ごめん、お願い。帰って」

とだけ呟き再び俯いた。