【実況者】こちら、本拠地です。 (ページ20)

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それから数週間ほど経ったあとのこと。
私は一人で

「じゃあ、始めようか」

とだけ呟いた。
私自身を消す為に。
もう誰にも迷惑をかけないように。
終わりを描き出すために。
私はそっとキーボードを打ち、目の前で変わらず光を灯し続けるパソコンに向き合いながらそう言った。
ああいう風に言ったはいいがどうせ私が変わらぬように向こうも変わることは無いのだろう。
ならば、最初から無かった事にすれば万事解決。向こうもきっと何事も無かったように普通の誰かのファンに戻る、それだけだ。代償もリスクも何も無い。
それなのに、指がありえないくらい震えて、動かすことが出来なくなり最後のキーが押せない。

「終わりにしたい…」

口が勝手に動く、でも指は固まったまま。
終わらせたくない思いと終わらせたい思い、
両極端に立っている感情が揺れて一向にケリがつかない。
いつしか、指どころか全身まで震え始めて固まってしまった。
消してしまえばもう戻れない。
戻る価値もないものに何を躊躇っているのだろうか、迷惑でしかないコンテンツを消せない…その理由は、私自身が望まないから。

だけど、もう

「誰かに、迷惑はかけられないんだ…！」

無理矢理動かして強めにエンターキーを押し込む。次いで表示された画面はサヨナラを意味していた。…全てが、終わった。
もう私を縛りこむ足枷が無くなったはずなのに、黒い気持ちで満たされていた。